MSTY

プーと大人になった僕のMSTYのレビュー・感想・評価

プーと大人になった僕(2018年製作の映画)
4.0
とても安らげる映画だったし、これは『暇と退屈の倫理学』の実践編だと思った。

忙しくしている人の中には「何もしない」というのをすることができないという人がいる。その人にとっては、暇ができたときに何もしないということが退屈とイコールになってしまっているのかもしれない。

だが、暇と退屈はまったくの別概念である。暇とは「何もすることのない、する必要のない時間」のことであり、退屈とは「何かをしたいのにできないという感情や気分」のことである。

暇を楽しむことは、退屈を乗り越えることにつながり、身の回りのさまざまなことへの目配せを可能にする。要は、暇を楽しめるようになれば気持ちに余裕が生まれるようになるということである。

この作品は、大人になったロビンが、プーとその仲間たちとの再会を通じてそのことに気付いていく過程を丁寧に描いていた。プーさんたちは暇であるかもしれないが、退屈はしていない。それは「何もしない」をしている、という自覚があるからである。この「何もしない」ことに価値があるという考え方があるから、余暇とか余裕と呼ばれるものが出てくる。

せわしない現実のスピードに無理してついていっているものの毎日疲れが蓄積してしまう、そんな人にこそ勧めたい。実写のプーさんたちはちょっとくすんでいて薄汚れているけれども、それがだんだんと愛らしくなってくる。日々の喧騒に疲れている人にとっては、そんなところも癒しになったりするかもしれない。
MSTY

MSTY