映画としてつまらなかった。
内容の重さに関わらず、映画として素晴らしいと思わせられた『ヒトラーの贋札』などと比べると、薄く間延びしたものに感じられた。
ドキュメンタリーの要素としても、心情描写などが突き刺さらず、一部ミュージックビデオなのかと思うような音楽の煩わしさと尺の長さに辟易した。
画質やカメラワークなどは最近の作品だけにすこぶる綺麗。昔の作品と比べて比にならない程機材や技術は上がっている筈なのに、画質が美しいだけであまり訴えかけてこない。
個人的な偏見と独断でヒカキンに例えるならば、家賃150万の家で撮られた、画質だけはいい最近のうっすい動画より、安いボロアパートで毎日練習したボイパを奏でる過去の動画の方がよほど感動する、といった感じに似ている。
まあ、こういった史実に基づいた映画は、時が経つほど時代も人の心も移り変わり、当時の凄惨さをいかに表現するかが難しくなるのは分からなくもない。
生存者も続々と亡くなり、身近に当時のような危険を感じることもなくなり、娯楽や文化も変わり、我々が過ごしている日常とは程遠い。
何か、紙の上から撫でたような白々しさを感じるのはその為かもしれない。
技術や時代が変わっても、描きたいもの、伝えたいインパクトを的確自在に与えられる監督って、貴重だな。
そう考えさせられた作品。