emily

真白の恋のemilyのレビュー・感想・評価

真白の恋(2015年製作の映画)
4.1
富山県射水市を舞台に軽度の知的障害のある真白が東京からやってきたフリーカメラマンに恋をした。今まで両親から過保護に育てられ、犬の散歩と父の経営するサイクルショップの店番をするのみの日々。カメラマン油井と出会いカメラを通して恋をする喜びをやさしい目で描写する。

 心洗われるような真白の美しい純愛。軽度の知的障害なため見た目には一切分からない。油井はそれを真白の個性でよいところだと褒める。壮大な山々と雪景色、朝日から夕日、田舎の街の風景の中でたゆたう空気が、真白の心情を浮き彫りにし、優しい音楽が寄り添う。

 家族は娘を守りたい一心で、気が付いたら真白を抑えてしまう結果になってしまっている。静かながらも家族の心情もしっかり描写されており、そこにはしっかり愛が行きかっている。しかし一言目には「障害者なんだから」と自然に出てしまうのだ。一線を引いているのは、家族や周りの物で、その発言は確実に本人に心の障害を植え付ける結果となっている。しかしそこに悪意は全くない。ただ愛する家族のために自分たちが出来る事を精一杯やってるだけなのだ。

 彼女が恋をすることで、そこに第三者が加わる事で、真白自身が変わっていくのだ。そこにあるのは普通の純愛だ。恋をして灰色だった世界が煌びやかに輝きだす。なんでもない景色が別の色に見え始める。カメラを通して形に残せばなおそこに自分の心情がのる物だ。同じ景色でも見る人によって別の色になるのだ。その色に見せるのは自分自身の捉え方が変わったからである。

 恋は幸せと勇気を与える。そうしてそれは周りにも伝染するのだ。彼女の恋は真白自身の成長へ繋がるだけでない。心にあった障害の壁を取っ払ったのは家族自身も同じなのだ。そこには今までと変わらない世界がある。変わらない景色がある。でもそれを見る私は昨日までの私とは違う。だから何でもない日常にも笑顔がそうして穏やかな気持ちがながれている。景色は変わらない。狭い世界を大きく価値のある物に見せるのは、自分の心次第である。
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