KH

ビジョンのKHのレビュー・感想・評価

ビジョン(2015年製作の映画)
3.7
年間ノルマ60本中54作品目。
見させて貰いました。

こちらはNetflixでクリップしていたものです。ある程度の評価が良いのは知ってて、
見よう見ようとは思いつつも160分か、強気やなみたいな理由で、多少敬遠してました。
まぁこの辺は吹き替えとかあればもっと気軽に見れるんですが、字幕オンリーだったので、とりあえずは全集中で見ました。

またこちらは絶賛大評判の『RRR』に出演してる方も出てるそうなので、きっとインドではバリバリに売れっ子なんだろうとは思ってますが、実はその辺も見逃してます。
いつかは見たい。いや絶対に見る。

まずは、ネタバレなしの率直な感想をば述べます。


『非常に良くできた作品でした。よく出来てはいますが、やはり若干長い気がしないでもないです。
まぁもちろん見応えはあるし、こちらは歌って踊ってが全くないタイプのインド映画なので、あくまでもストーリー真っ向勝負というか、
あー、こういうタイプのインド映画もあるんやなぁと衝撃を受けました。また、馴染みのない国なだけに、本当にこんなことが起こるのだろうか?とか、その辺の宗教的な背景なんかはもちろん全くわかってないですが、それでも丁寧に作り込まれてるので、話がわからなくなるという事は心配しなくても大丈夫です。非常にいい作品です。是非お勧めしたい一本』


また、ここからは作品のネタバレを含みますので、まだ見てない方はご注意を、


とりあえず、話は至って単純で、

警察署長のドラ息子が、ヴィジェイ一家の娘のシャワーシーンを盗撮し、さらにはその動画をネタに揺りに来たことから始まります。
母が気を引いている隙に携帯を棒で叩き落とそうとしたが、ドラ息子のサムが携帯を下げてしまったので、うっかり頭を殴ってしまい殺してしまいます。

帰宅した父ヴィジェイは、すぐさまアリバイ工作や、死体を隠すことに奔走しますが、
サムの車に乗り込むところを、街の警官に見られたことで容疑をかけられます。

しかしながら、彼の作り出すアリバイ工作は完璧で、疑いの余地もないと思いきや、
逆に完璧すぎるとの理由で、尋問はとうとう暴力に発展。

とうとう末の娘が自供したと思いきや、そこには犬の死体が、
警察の横暴とも言える捜査は民衆からの非難を浴び、長官夫婦は辞職。
悪徳警官のガイトンデもクビになり、晴れて家族は無罪に、

再びヴィジェイを呼び出した長官夫妻は、彼に捜査には一切関係はないけれど、どうしても真実が知りたいと告げる。
自分たちの息子は帰ってくるのかと、

すると、ヴィジェイは『帰っては来ない』事を告げます。

実はサムの死体は新しく建てられた警察署の下に埋まっているというラストでエンディングとなります。


やはり見どころは何と言っても、アリバイ工作の仕方と、家族への供述の口裏合わせ、
さらには彼が大の映画好きという観点から
ありとあらゆる事を想定して行動していた部分が非常に見応えがありました。

確かに、この一日二日のズレをどうやってるんだろう?と想像するも、
なんと長官のミラーの推理によりネタバラシになるあたりは絶妙で、
それを当てるミラーもさることながら、

ここまで予測していたのには驚きでした。しかし、これはインド人特有なのでしょうか?
アリバイとなる主要な人物
例えば、バスの運転手、ホテルの従業員、レストランの店長、映画館の映写機係、ヴィジェイの部下、街の喫茶店の店主などなど、
それら全ての人が、

ヴィジェイの
『ほらこの前行ってきたって言ったろ?二日と三日の日だよ‼︎』
という言葉に、あー!そうそう!それそれ!となって間違った供述をしてしまっているのは、少しだけお国柄な感じがしないでもないですが、
もともとヴィジェイがかなりの善人だったことが彼を庇うという事を後押ししている様に思う。

また、長官の旦那は終始、ガイトンデの見間違いじゃない?と語ってるあたり、
まぁ日本人ならまず間違いなくそう思うよなとちょっとだけ好印象。推理的にはめちゃくちゃ間違っているけど、
街の善人と、悪徳警官のどちらを信用すんねんという話。

また、結果的に無罪放免になってしまったとはいえ、娘がサムを殺害したという事実や、
警察を相手取り嘘の供述をしてしまっているという事実だけは動かないので、
その辺の罪の意識みたいなものを家族がどう感じているのか、

これ日本で作ったら絶対このラストにはならないはずと思います。日本は必ず悪は罰せられるのが常なので、

仮に故意でなくても、事故であっても、また殺した人間が悪人であっても、
彼らのやった行為は褒められたり賞賛されるものではないので、日本でこれを流すわけにはいかないというか、
うん、絶対に無理だろうなとは思いつつも、
そう言った意味でもこの作品は見る価値があったように思います。

きっと彼ら家族は、この先一生この事実を背負って生きるのは間違いなく、
場合によっては、新署長に再度詰められる事になるかもしれません。

しかし、それでも家長が何も悪いことをしていない家族をそれこそ命がけで守っていくんだろうなという作品だと感じます。

非常に素晴らしい映画でした。

今回はこの辺にします。
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