LEONkei

アノマリサのLEONkeiのレビュー・感想・評価

アノマリサ(2015年製作の映画)
3.3
もし〝あなたは何者?〟と問われたなら、あなたは答えられるか…

シンシナティへ『顧客サービス会議』の講師として訪れた、中年男〝マイケル・ストーン〟が宿泊する高級ホテル〈フレゴリ〉で起こった2日間のミニチュア・パペットのストップモーションアニメの物語。

人生に疲れ人を信じず絶望の淵を彷徨い、抜け殻のような〝マイケル〟。
失いかけていたココロを取り戻す1つの光がホテルにあった…

タクシーの窓に雨粒が付き対向車からのヘッドライトに照らされる顔、額のシワ、眉を寄せる仕草、うつろな目、ささやく口元…ストップモーションアニメと分かっていても表情豊かな動きは本物より本物らしい。

俳優を使ったりCGアニメの方が簡単に制作できるのだろうが、時間と手間をかけた意味が分かるような気がする。

ホテルで出会ったコンプレックスをもった女性〝リサ〟とのセックスシーンは、大袈裟に言うと映画史に残るくらい印象的。
初めて肌と肌が触れたときに密着するあの感覚や、服を互いに脱がせるぎこちなさ…
リアルで生々しいセックス描写だが、気がつけばこれはマペットなんだと。

マペットの顔は継ぎ目すら消さず雑でクッキリ見えているのに、なぜ違和感なく人間のように見えるのか。
一見すると歪なマペットなのだが、これは人間も同じことではないか。

人間は誰ひとり同じ人はおらず、個々の個性があるから面白い。
その個性が理解されない時もあるが、それは仕方のない事と諦めるしかない。
しかし、何処かで必ずその個性を理解してくれる人はいるだろう…と、〝マイケル〟と〝リサ〟は互いの言葉では表現できないアノマリー〈変則的〉を感じ合う。

ベッドの上で〝マイケル〟は〝リサ〟に素敵な言葉を投げかけるが、後日その言葉の意味を〝リサ〟はさらに素敵な言葉として返すことになる。



チャーリー・カウフマンの独創的な深い人間ドラマは大人の悲しくて切ない、それでいてコメディ要素も含んでいるのでサクッと観れます。

〝あなたは何者か?〟と問われたなら〝自分は自分〟と素直に答えられれば、きっともっと日々楽に生きていけるのではと自分は思います。

他人と違うことは良いことで当たり前のこと…むしろ、それは個性で自分自身であるのですから…(u_u)
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