いけぴ

リップヴァンウィンクルの花嫁のいけぴのレビュー・感想・評価

4.5
本作のイメージ画像だけだったら、これほどまでにアップダウンのあるストーリーだとは想像もしなかった。
前半2/4の冗談のような出来事の連続、3/4に差し掛かるまでの邸宅での(比較的)穏やかな生活、そしてラスト1/4の衝撃的な展開、3時間に及ぶ作品なのでお腹いっぱいなところは否めないが、とにかくストーリーが面白かった。

終盤のりりィのシーン、「!?」ってなって笑ってしまったけど、あれだけでメインキャストの働きをしてしまうりりィ、すごい。
惜しい俳優が早く亡くなってしまった。もっともっと作品を遺してほしかったと思う。
Coccoは15年くらい前から変な人だと思ってたが、良い意味であの変さを十分に表面に出してくれた。
「強く儚い」と思った。
あと、歌唱力にフォーカスしないあのような撮り方でも、かなり歌の上手さが際立つ。さすが。

岩井俊二は「幸せ」をキーワードにしたかったようだけど、どちらかというと「愛」がテーマと聞いた方がしっくりくるかな?
真白(Cocco)が最期「100%」幸せだったかというと肯定しきれない。
ただ「自分が何者になるか?」という観点を絡めると、七海(黒木華)と真白が、己を偽らず、互いの愛に目覚めて「幸せ」になった、というところまで考えたら、真白の人生はこれで良かったのかもしれない。

真白と同じような生きづらさを感じているような人は多いと思う。
自分はこんなに愛されるべき人じゃない、自分はこんなに評価されるべき人ではないと。
この映画を観てすぐに救われる人は少ないかもしれないけれど、近しい人の愛に気づいて、ラストシーン、少しだけこの世界が素晴らしいと思えたらいいと思う。
長い話だったが、面白かった。
いけぴ

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