雷電五郎

ミュージアムの雷電五郎のレビュー・感想・評価

ミュージアム(2016年製作の映画)
3.2
家庭を顧みず仕事に没頭するあまり、子供を連れ妻に出ていかれてしまった沢村刑事が、とある猟奇殺人をきっかけに事件に巻き込まれてゆくサスペンスです。

猟奇殺人にふさわしく残虐な殺害方法がもりもり出てくるのが邦画では珍しいのではないかと。セブンとSAWを足して二で割ったような残酷描写は見ごたえがありました。また、物語の展開も概ね楽しめたのですが、犯人の人物像のディテールがどうしてもテンプレート的になってしまっているのが残念でした。

何かしらの美学を持って殺害しているのであれば、その心情をペラペラと喋らせてしまうのは不気味さと緊張感に欠ける演出です。同じ人間でありながら到底理解の及ばない相手を前にした時の恐怖心を感じないと、いわば犯人の格が落ちる訳です。
その点がいまいち不満で、若干モヤモヤしてしまいました。

更に、意地悪なことを言うようですが沢村が監禁されるシーンから脱出した後の「EAT」のエピソードですが、小栗旬さんの絶望に満ちた演技がよかっただけに実は生きてましたという展開はいただけなかったです。そこは容赦なく、絶望感を叩きつけてもよかったのではないかと。

後輩刑事の殺害シーンにしてもアートと宣うのであれば、あんな簡単な方法で死に至らしめるのも芸術家の矜持が足りないと感じられ、もう少し異常な程に自分の在り方に対する執着を見せてほしかった気がします。

グロい死体が出てくる割には全体的に優しいといいますか、ご都合的なシーンも見受けられ勿体なさを感じました。もっと突き抜けた精神的肉体的残酷さがあれば、鮮烈なインパクトを与える作品になったと思うと惜しいと言わざるをえません。

ただ、犯人役の妻夫木聡さんが相変わらず素晴らしい演技力でキャストを見た際に驚きました。
雷電五郎

雷電五郎