幌舞さば緒

イップ・マン 継承の幌舞さば緒のネタバレレビュー・内容・結末

イップ・マン 継承(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ドニー・イェン演じるイップ・マンという映画キャラが、マイク・タイソンまでも出演する3作目のラストでどんな格言を言い残すのかずっと気になり、ついにその時がきて「一番大切なのは…そばにいる人だ」と言った瞬間に「おぉ…笑」と言い漏らしてしまった。武術家がアクション演技で強さを表現して尚且つ、家族や人との繋がりや謙虚さを大切にする台詞を言い放つ作品を作る中国映画界は偉大。話を盛りすぎなのかもしれないが、漢飯と漢映画は盛りすぎくらいが丁度いい。ドニー・イェンが演じるイップマンと、リン・ホンが演じる妻のウィンシンの二人は劇中終始、表情、佇まい、動作、行動、言動…何から何まで人格者なところがカッコイイ。偉大すぎる師とその嫁感。川井憲次さんのメインテーマも最高。


1〜4の台詞メモ

佛山は南派武術の発祥地。修道場の武館が立ち並ぶ武術の里である。

一九三五年 佛山武館街

★「カム・サンチャウだ。佛山は武術が…」「もう知ってる。カム師匠。私に挑戦しに来たのだな?」「そうとも。武館を開くから俺の力を示したい」「武館を開くなら私と戦う前に場所捜しを。お帰りを。ワン、チュンを奥に」「イップ・マン!はぐらかすとは怖じ気づいたな?」「ここは武館じゃない。誰も闘わない。帰って!」「そのとおり。私は闘わないのでお帰りを」「詠春拳の開祖は女とか。だから女々しく女房を恐れてるんだな」「恐れてるのではなく、大事に思ってるのだ」「奥さん、大丈夫だ、殺しやしない。心配なら片手で闘う。手を使わなくても!」「イップ師匠そいつを倒せ!」「佛山にはがっかりだ。お前らは…」「静かに!物を壊さないで」

★「詠春拳のイップ・マン」「楽しみだな。大の男が女の拳でどう闘うか」「良い拳法は老若男女を問わない。闘えばわかる」

★どうだ?私の拳は悪くないだろ?」「うるさい!」「俺の北派拳がお前の南派拳に負けた」「勝敗の決め手は拳の差でなくあなただ」

★「運が味方を」「謙虚だな。師匠は広東の宝」

「おい!貴様、名前は?」「ただの中国人だ」

★「私は役立たずだ。何もできん。武術ができてもそれが何だ。この世界は…余りに狭すぎて何もできん」「どんな世界でもいい。今の私はとても幸せよ。あなたと私とチュンが一緒にいられるだけで十分だわ」「それが家族だよ」

「閣下は本当に葉問と試合をするんですか?」「もちろんだとも。彼は貴重な存在だよ」「しかし私が見る限り、奴は我々皇軍の教官になるとは思えません。奴が試合をするのは何か他に理由があるからです。閣下、どうか試合をしないでください。私に処刑をさせてください」「もしお前が自分にとって強い男が闘いを挑んで来たとする。それを無視してその男を…射殺する。それは負けを認めたことと同じことじゃないのか?」「閣下が中国人と試合をするということはその勝ち負けは最早、閣下個人の問題ではありません。我々日本人の国民全体の名誉に関わる…」「お前は俺が負けるとでも思ってるのか?」「いえ、私はただ万が一ということも…」「率直に言わせてもらうが、私が負けることなどありえん」

★武術は闘うための技だが、中国武術の精神は儒教であり、武術の徳は仁だ。他を自分と同じように扱うのが仁。武力で民に圧力をかけるあなたたちは中国武術に値しない。

★イップ・マンの詠春拳を学んだ者は2百万人以上。その中には才能溢れ努力を惜しまぬ武術家も多い。そのひとりが李小龍、ブルース・リーである。

「師匠、一度に10人を倒せるかい?」「まず逃げる。続けなさい」「武装した連中が沢山来たら?」「逃げる」

「あなたの身を案じるのはもうイヤよ」「戦時中の苦労を思えば何でも乗り越えられるだろ?心配するな。疲れただろう。もう眠ろう」

「侮辱は許せない」「誇りより命が大切だ」「自分ではなく中国武術の誇りのためだ」

「不幸にも中国人の武術家が自分の実力を過大評価しチャンピオンに挑戦。ツイスターは仕方なく挑戦を受けました。対戦中、彼は手加減していたが、相手の中国人が余りにも弱かったため、ツイスターの攻撃に耐えきれず数発のパンチで悲劇的な死を遂げました。彼の死に遺憾の意を表明します」「またツイスターの名誉のため試合を行うことを決めました。ボクシング対中国武術です。今回も彼は正々堂々とリングで闘います」「俺は自分の名誉と名声を守るために中国人と再び闘うことに同意した。聞いたところでは、中国人は試合でこんな物を使うとか。俺もその伝統を棒に振ることなくこう決心した。試合では誰が相手でもこれが燃え尽きるまで俺は闘う。こんなに大きな線香だから何人もの挑戦を受けられる。だが警告しておく。今回は手加減しない。線香が尽きる頃には中国人ボクサーはこの世から消える。俺が皆殺しにする。これを使うまでもないだろう。どうせ中国人は誰ひとりも俺とリングに上がる根性はない」

★「線香は時を計るだけではない。線香を燃やす風習にはもっと重要な教えがある。〝常に謙虚であれ〟それが中国文化だ」

「私は勝ったが中国武術がボクシングより勝っているわけではない。私は信じている。人はそれぞれに身分の違いはあれど、その品格は同じで貴賎の区別はないと。今この瞬間から私達が心を開き、互いを尊重できるよう願う」

★「イップ師匠!今一番したいことは?」「家に帰りたい」

「友達を連れてきた。武術を習いたいそうだ。おいで」「いくらで教えるの?」「名前は?」「李小龍」「なぜ武術を?」「イヤな奴をやっつける」「見込みあるな。大きくなったらまた来い」

李小龍、後のブルース・リーは1956年にイップの弟子となり、詠春拳の理論をもとに截拳道(ジークンドー)を創造。22年間に渡りイップ・マンは詠春拳の種をまき武術を世界中に広めた。

「イップ師匠」「おはよう、早いな」「師匠、俺だ。忘れた?小龍(シウロン)さ。ガキの頃〝大きくなったら来い〟と。今日こそ弟子入りだ」「今日、私が承諾すると?」「将来、俺は最強の弟子になる」「根拠は何だ」「アァー゛俺は速い」「見せてみろ。…遅いぞ若造。もう少し。悪くないな。だが水を蹴ることはできたか?」

「イップ師匠はチャン・ワーソン師匠のお弟子ですか?」「ええ」「では、お互い佛山のリョン・ツァン先生の孫弟子」「兄弟弟子も同然ですね」「チャン・ワーソン師匠の拳術と棍術は刀術や脚技にも勝るとか」「どの師匠にも得意と不得意がある」「イップ師匠は?」「私など…」「機会があったら手合わせを」「いずれ」

★「学校は守れない」「ほかの警官とは違うとあんたを信じたのに西洋人の命令1つで放棄?」「違うさ、手を出せないんだ」「放火犯を放置し市民や子供を見捨てるのか。今ではうちの弟子が警察代わりだ」「どうしろと?何ができる。師匠がいくら達人でも世界は変えられん。警備もムダだ。いつまで続けられる?香港は西洋人が統治してる」「社会は不公平。だが人間は平等であるべき。統治者が尊いとは限らない。貧者が卑しいとは限らない。世界を動かすのは金持ちや権力者でなく心ある者だ。子供のためを考えろ。我々の行動を子供たちが見てる。我々は子供の手本になるべきだ。行動はすべて今だけでなく未来につながる」

「お前がイップ・マン?中国最強の格闘家か。オモシロイ、勝負しよう。詠春拳の拳は最速だとか。速さに勝るものは無敵。どちらの拳が速いか。お前か俺か。3分間だ。倒れずにいられたら見逃してやる」

★「毎日そばにいてくれて本当に嬉しい。でも最高ではないの。昔聞いた言葉〝命はあなたのものだが、あなたのものでない〟当時はよく分からなかった。でも最近、分かり始めた。あなたはあなたに属し、家族に属してる。それにこの場所にも。やるべきことがあるはず。私のせいで悔いを残さないで」「君への配慮不足が唯一の悔いだ」「もう十分よくしてくれたわ。私が病気でなかったら挑戦に応じた?」「ああ」「それでこそ私のイップ・マン。ごめんなさい、対戦を申し込んだわ。木人椿の音、しばらく聞いてない。もう一度聞かせて」

★「一番大切なのは、そばにいる人だ」

「彼1人で中国武術を代表できる?」「あなたの弟子は態度がデカすぎる。彼が空手道大会に出るのは我々への挑発だ」「明らかな挑発だ」「そのとおり」「本は読みました。よく書けてる。西洋人に教えて何か問題が?」

「偉くなったつもり?黄色いサルのくせに。リーダーと認めない。アメリカであんたたちは支配される側よ」「からまないで」「気に入らないならアジアに帰れ。ここは代々、私たちの土地。一体何しに来たのよ」「金髪女って本当にバカなのね。アメリカは移民の国。真のアメリカ人は先住民だけ。あんたの先祖は侵略者よ、白人女」

「奴らは私たちを追い出そうとしてる。中華街ごと潰そうとまで!分かるか?」「中華街を出て彼らと交流し、状況を変えようとしたか?」

「勝ち負けは本当に重要なのか?中国武術を通して華人への偏見を変えるべきでは?」

「降参です先生!」「今何て言った!降伏するつもりか?どうなんだ!我々のモットーは〝殺すために鍛え、死に備えろ〟意味は分かってるか?」「痛いです!」「痛いだと?それが問題の根源だ。俺が人種差別主義者だと噂が流れてる。お前を嫌いなのは肌の色のせいじゃない。臆病な黒人だからだ!」

「チアが君の夢?」「そうじゃないけど好きだからなってる。おじさんも武術が好きでしょ?」「中秋節の舞台でチアを披露してみては?」「いいアイデアね。なぜ気づかなかったのか。見に来てよね」

★「俺はコリン・フレイター。極天空手の黒帯4段だ。黄色い野郎に空手の力を思い知らせる。インチキなカンフーで俺と闘ってみろ」

★「瞬殺してやる!」「手加減しないぞ」「そんなに死にたいか!」「かかって来い」「遠慮はしない!ワア!」「師匠!」「ロー師匠!」(やられかた…笑)

「私は武術家だ。不公正には立ち向かわないと。武術を始めた初心を捨てるわけにはいかない。君もチアを捨てないだろ」

★「幸運に恵まれアメリカに渡ってきたなら我々の文化について学ぶ必要がある。ここにいられることを光栄に思え。なぜならアメリカは世界で最も偉大な強国だ。この地の優越性は疑いようのない事実だ。分かったか?」「サーイエッサー!」「昨夜は残念な任務を実行せねばならず、敗れるべき劣った民族を倒すさまを見せた。諸君も見たとおり結果は圧倒的だった。お前らの劣った文化を海兵隊に入れようとするな」「サーイエッサー!」「人種差別だ。周りを見ろ、人こそが文化。その優越性は単なる偏見と憎悪だ。こちらはイップ・マン師匠。コリンを倒した方だ。そして今からお前をぶっ倒す」「反則規定なしで倒れるまで闘う」

「アメリカへはやっぱり行かない。武術が好きなんだ。父さん、教えてよ」「分かった。どこで暮らすにせよ最も重要なのは自信だ」

1972年12月2日、一代宗師イップ・マンは79歳で世を去った。米軍は70年代に中国武術を取り入れ始め2001年、海兵隊が中国武術を必修課程とした。
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