なっこ

恋妻家宮本のなっこのレビュー・感想・評価

恋妻家宮本(2017年製作の映画)
2.8
人生は選択の連続だ。人はいつも正しいことを選ぼうとする。でも実は正しいことを選んで行けば、後悔しないなんてのは、ただの思い込みに過ぎない。

私も“正しい”という言葉を使う時は慎重になる。誰かにとっての正義は、誰かを傷付ける刃になることもあるからだ。

ひとつの選択を目の前にして優柔不断であることは、その言葉の通り、どこか優しさのある人が陥りやすい。それは時として、自分ではない誰かに選ばせることで責任転嫁して結果として自分に甘いのかもしれないし、自分が何かを選ぶことで誰か大切な人を傷付けそうで選べない優しさなのかもしれない。

でも、後悔するくらいなら時間をかけて選んでいったら良いのだと思う。急いで選んだ結果は、きっとその人の人生には馴染まない。

ファミリーレストランで繰り広げられるひとりの男の人生の選択劇。メニューの中から食べたいものを選んでいくように、誰と付き合うか、結婚するか夢をとるか、1つずつ選んで人生は進んでいく。

食べることは生きること。
“食”のまわりに“人”がいる。
誰とどこで食べたいのか、誰に何を食べさせたいのか、毎日食べたいものは何か、そしてこの先の未来まで、誰とどのように食事をすることが自分の幸せなのか。
食べることを軸に考えていけば、自然と自分の未来を考え始める。

前半はコミカルだけれど、妻に離婚届のことを切り出してからは、なかなかシリアスな展開に。

3.11以後の世界を生きる私たちは、津波でも流されていかない確かなものを探している。本当に大事なものは何か。何を大切にしてこれからの日々を生きていくべきか。
その答えは、暗闇に閉ざされた中でひとつのろうそくの光の届く範囲ほどの狭い範囲にあるものなのかもしれない。

妻が離婚届を挟んでおいた『暗夜行路』。読みたくなりました。
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