グラッデン

ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出のグラッデンのレビュー・感想・評価

4.1
英国王・ジョージ6世の娘・エリザベス(現在のエリザベス2世)とマーガレットの姉妹が1945年のVEday(ヨーロッパ戦勝記念日)の夜に経験した初めての自由行動を描いた作品。

『ローマの休日』の物語の元ネタにもなった史実にもとづく物語というのも驚かされますが、現在も在位されている現役の女王陛下が主人公というのも凄い。撮影の一部は実際のバッキンガム宮殿の近くを使われたそうで、脚本を読んで許可を出した王室の懐の深さも素晴らしい。

女王陛下の若き日の出来事を描いた物語ということで、それなりに落ち着いた展開になるのかと思ったら、予想以上にドタバタなハプニング連発(笑)「おてんば」という言葉がピッタリのマーガレット妃殿下をはじめ、見事に2人を見失う護衛役のポンコツ軍人コンビ、お祭騒ぎの街の人々まで、各場面ごとにアクセントを効かせるナイスキャラが多かったので、何度も笑わせてもらいましたし、楽しかったです。

一方、冷静になってスクリーンに映るロンドンの街を見ると、土嚢が積み上げられていたり、廃墟になった家に暮らす人だったり、まだ戦争が終わった直後である雰囲気を醸し出してきます(衣装やセットの作り込みも非常に充実してました)。
見方によっては異常にも見える観衆の騒ぎぶりも、長く辛い戦争から解放されたことへの解放感によるものだということが徐々に伝わってきます。だからこそ、姉妹の父でもあり『英国王のスピーチ』でも取り上げられた国王・ジョージ6世が劇中で述べた「戦後という現実」を受け入れる前の熱狂である、という指摘は印象に残りました。国民を鼓舞する演説を述べた彼だからこそ、先行きのない将来への不安を感じ取れたのかもしれませんし、その意味で真面目な彼が姉妹を城の外に出したのかもしれないな、と思いました。

エリザベスを演じたサラ・ガドンさんは、非常に難しい役柄をこなした演技も素晴らしかったですし、うっとりするほど素敵でした。それだけでも見に行って良かったかもしれないです。