ペジオ

ミュートのペジオのレビュー・感想・評価

ミュート(2018年製作の映画)
4.2
「愛」って時々人に愚かな事をさせる

ダンカン・ジョーンズは普通にファンなので「デヴィッド・ボウイの息子」っていう七光り的な紹介はしたくないのだけれど…

SFである必然性はほとんど無いストーリーを、近未来のベルリンを舞台にして語ったのは、亡き父親への想いがそうさせたのだろうか
人工物に対するフェティッシュさ、曖昧なジェンダーと倒錯した性的欲求、スタイリッシュで猥雑な裏社会
「ブレードランナー」フォロワーではあると思うが、それ以上に「画面の隅をボウイが歩いていても何の違和感も無い世界だな」と思った
そんな世界で積み上げられる様々な愛のカタチからは、「巨大過ぎる父親を持った息子」という監督の自伝的要素も見てとれる気がする
(「僕の映画はフィクションと呼べる範囲でめいっぱい自伝的だ」と言った映画監督がいたっけ。)

設定故に必要以上に純粋そうに見えるアレクサンダー・スカルスガルドや、娘想いの敵役のポール・ラッド(とその親友の複雑な関係性)など好きな要素は多いが、せっかくの面白い設定(喋れない、SF世界でのアーミッシュ)を活かしきっているとは言いがたく、手放しで傑作とは全然思わない
正直ダンカン・ジョーンズならもっと上手くできたと思うんだけれど、そこは劇中の登場人物達の様に「愛」に殉じた結果、悪手を選んでしまったのだと解釈する

だったらなぜ嫌いになれようか
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