塩湖

ドキュメンタリー:映画監督ミヒャエル・ハネケの塩湖のレビュー・感想・評価

4.5
単なるメイキング&インタビュー集だから、ただひたすらに面白かった。公開順を遡っているため映るハネケはどんどん若返っていく。デビュー作『セブンス・コンチネント』に辿り着いた後、当時の最新作『愛、アムール』にふたたび立ち返る所作の鮮やかさ。ハネケという人が俳優ごとに異なる語彙で"解釈"されてるのも聞いててわくわく。監督一人が楽しんでいる、というだれかの言葉は忘れがたいが、それでも『コード・アンノウン』など何だか人の数が多い作品の現場に、ある種の異様な一体感が渦巻いていることはたしか。まあ、絶対そこに参加したくないな、と心の底から思える。『白いリボン』の現場で子役の顔にパイプの煙あててケラケラ笑ってるスタッフいて結構引いちゃった。"異化効果"という単語がハネケの口から度々飛び出てくるが、作中の描写以上に、『愛、アムール』のカメリハのときにハネケ本人が夫役の位置に立って演技をしてる、それがしばらく映画のワンシーンのように本ドキュメンタリーを見る側に提示されるとこが"異化効果"として最も本質的かつ魅力的に感じた。あそこはハネケの自画像みたいな趣もあるかも。
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