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ランジュ氏の犯罪のHKのレビュー・感想・評価

ランジュ氏の犯罪(1936年製作の映画)
3.7
ルノワールのノワール・・・スタイリッシュな映像とユーモアが共存する快作でした。
ある田舎町のバー兼安宿にわけあり風の男女が現れ部屋をとりますが、店の者たちは殺人で指名手配中の男女だと気づきます。そこに女が部屋から出てきてこれまでの経緯を皆に語り始めるという回想形式。

小さな出版社で働くランジュは仕事の合間に冒険小説(西部劇)「アリゾナ・ジム」を書く夢想家の青年。しかし経営難の出版社社長はその小説を雑誌に掲載してやるとランジュをだまして勝手にスポンサー好みに改竄した上で権利も売っぱらって自分は夜逃げ。
残されたランジュたちは協力し合い「アリゾナ・ジム」も大ヒットしたおかげで、この難局をなんとか乗り切ったように思えましたが・・・

この社長役がマルセル・カルネの『陽は昇る』でもジャン・ギャバン相手に強烈な憎まれ役を演じていたジュールス・ベリーという俳優で本作でもほとんど同じ役回り。
強欲で口八丁手八丁の女たらしで身振り手振りがイヤらしく胡散臭い、もう憎まれ役の鏡。
主人公の彼女がこの男の元カノだったところまで同じ。
しかもどちらの作品でも真面目で人の好い主人公によって序盤ですでに・・・
あ、回想形式といい敵役キャラといい似てると思ったら脚本も『陽は昇る』と同じジャック・プレヴェールでした。

「アリゾナ・ジム」の主人公がやたらと劇中でスポンサーの薬を飲むというのが笑えます。スポンサー商品が露骨に登場する日活時代の鈴木清順の映画を思い出してしまいました。
しかし、思っていたよりポップで軽快に話が進みながら、急にコワさを感じさせる展開はお見事。ここぞというシーンの長回しも印象的でした。

主人公のランジュにルネ・ルフェーブル(『ル・ミリオン』)
気の弱い主人公にモーションかけまくるヒロインのバランティーヌにフロレル。
監督は有名画家ルノワールの次男ジョン・ルノワール(『ゲームの規則』『大いなる幻影』)。

以前観たベルトラン・タヴェルニエのドキュメンタリー『フランス映画への旅』の中に出てきて面白そうだとチェックした作品はこれまでどれも当たりなので、これからも観るのが楽しみになりました。
(U-NEXT配信終了滑り込み)
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