Torichock

貞子vs伽椰子のTorichockのレビュー・感想・評価

貞子vs伽椰子(2016年製作の映画)
3.9
「貞子vs伽倻子」

地雷も、ちゃんと作り込んで、ちゃんと踏んで、ちゃんと爆発すれば、死者続出。

「ヒメアノ〜ル」で、盛大に盛り上がったタイトルのカッコよさを覚えているだろう。
"さてと、お遊びはここまでです"
とでも言わんばかりの、あれ。

物語の中盤、安藤政信が登場するちょっと前、貞子の呪いを解こうとする霊能者の発言シーン。

"これ、やんなきゃだめだ!"

ここで、タイトルが出てもいいと思ったくらい。
こんな発言をする、友近のコント・西尾一男みたいなナリをした霊能者は、まるで白石晃士監督の宣言のように思えて、感動したのを覚えてる。
そしてこの映画が、このシーンを皮切りに、
"さてと、お遊びはここからです"
という開会宣言のように、完全にエクストリームな世界に突入していく。
僕は、映画鑑賞におけるこの"エクストリーム性"こそが、映画を観る醍醐味の一つだと思っている。

世間が予想したことや思ったとおりのことでありながら、その斜め上をいく、まさか!なエクストリームな領域まで持っていくスタンスは、ある意味「MAD MAX 怒りのデスロード」に近いものを感じた。
B級感漂う世間のイメージを真正面から受け止めつつ、そのイメージを最大限利用し、Jホラーの格式とか、そんなものを飛び越えたエネルギーそれ自体がカッコイイではないか!
怖い・怖くない、ホラーだ・ホラーじゃない、コメディだ・コメディじゃないだ、Jホラーというのはどうのこうの...とか、もううるせ〜よ!
マッチョになりたいマッチョになりたいという思いから、鍛え過ぎて、筋肉ダルマになっちゃったような愛らしさ。
すごい、じゃんこれ!ってところまで行ってる時点で勝ちの作品。

バットマンとスーパーマンが正義のあり方について揉めようが、アイアンマンとキャプテン・アメリカが眉間にシワ寄せて喧嘩しようが正直知ったこっちゃないが、貞子と伽倻子が、

"イヤイヤ、あの子はうちが呪い殺すんねや!"

と押し問答になるこの作品に、完全に振り切ったエクストリーム性を感じたので、映画の出来云々は抜きに評価したいです。

ってか、日本を代表する大悪霊様の頂上バトルですからね。オイオイオイオイ...となりますよね。どちらが勝っても、人間に得がない!最高だろー!

僕は、夕方の回に鑑賞したのですが、学校帰りの高校生カップルや小生意気そうな小・中学性のグループで溢れかえっていたのだが、僕の後ろにはなぜか、大人しそうなお母さんと娘の二人...。おい、怖ぇよ!

しかし、そんなことお構いなし。いつもの鑑賞態度は崩さない。

中盤、「ヒメアノ〜ル」で、男をひたすらムラムラさせた佐津川愛美ちゃんが、

"こらー!飲めやー!おらっ!"

と、「凶悪」のじじぶぅもびっくりな、顔射...ではなくて、顔面にひたすら水をぶっかけられ、無理矢理水を飲まされるシーンでぶちアガり!
大興奮と大爆笑する人間は僕のみ!くぅーーー。
本作、ひたすら酷い目にあう佐津川ちゃんが可愛くて愛おしい。不運だけど愛くるしい仔犬みたいな顔して。

呪われた家は呪われた家の方で、俊雄たんがいじめっ子を一人ずつ沈めていくカタルシスったらない、ざまーーーっ!!とぶちアガり。でも、そんな安っぽい勧善懲悪なんかで片付けない。いじめられっ子ももれなくいただくのが、伽倻子・俊雄コンビの品の良さである。
そして、今回の邂逅で重要な貞子と伽倻子の他にもう一つ、玉城ティナと僕である。
なんだ、あの子。
キャスト一覧の中では気にも留めなかったのに、あの映画の中の鈴花という役と雰囲気。
彼女自身の中にある悲しみと、その悲しみから他者の悲しみをしっかりと受け止められそうなそんな、優しいからこそ付け込まれる、ホラー映画のヒロインとして、完璧ではないか。
序盤、可愛い鈴木杏程度にしか見ていなかったけど、終わる頃には完全に一映画惚れ(一目惚れ的なもの)。山本美月をがぶりと喰ってました、僕の中で。山本美月は、どうしてもスクリーン映えしないです、なんか。

貞子と伽倻子が邂逅するロジックもなかなかよかった。
本当はどっちにも来てほしくないけど、どっちかだけ先に来られても、それはそれで都合が悪い、というハラハラさせる展開に落とし込んだのは見事だと思う。

その昔、グレート・ムタvsパワー・ウォーリアーのドリームマッチがあったのを思い出した。それこそ、闘魂列伝でひたすらやり込んだマッチメイクが、その昔確かに存在していた。
本作の貞子と伽倻子もまさにそれなのではないだろうか?
言わば、安藤政信はタイガー服部。
俊雄はパイプ椅子。

彼女たちをを炊きつけたら、黙っとれ!と、ボコボコにされてリングアウトにされた男。
だけど、めちゃくちゃカッコよかったぜ、お前!「GONINサーガ」やっぱり買うわ!

しかし、呪いのビデオが変わっていたり、呪われた家が変わっていたのは、大人の事情なのかもしれないけど、そこはしっかり残しておいてやってほしかった。
噂や都市伝説という、伝聞で変わる存在である両者が、本当にいたんだ!と思わせる、圧倒的な絶望感を損なっているように思えた。
もし、呪いのビデオが「リング」のそのままで、伽倻子の家が「呪怨」のあの家のままだったとしたら、鑑賞態度も少し背筋を張ってみていたかもしれない。

とにもかくにも、多くの人がワッキャワッキャと劇場に足を踏み入れてくれることを期待しています。
「シン・ゴジラ」とか多分、どうせ酷いんだろうし、夏休みはぜひこれ見に行ってください!
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