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君の名は。のhatraのレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.2
「既視感」「違和感」「偶然」「運命」など…
誰しも一度は空想したことがある日常的な「可能性」についてエンタメとして広げきった物語。
また、東日本大震災以降の作品群として「大きな災害」と「そこにいた人」というテーマが時代的象徴の側面を持つ。

公開時から
「舞台装置的な人物」「整合性への疑問」
「少女に反映される作り手の性癖」
など好みに合わない点が多くあった。

一方で同時に、世界的に称賛されているのも納得せざるを得ない傑作だったのも事実だ。
自身の好みを超越して評価するに至った点は大きく二つ、「ビジュアル」と「音楽」の凄まじさだ。

新海誠のフィルターを通して描かれる繊細な景色は実物よりも美しく、まるでキャラクターの心理を反映している。
初めて三葉が東京の街並みを眺めるシーンなんかは特に顕著だ。
実写映画でこうはならない。この辺に「絵」というものが持つ本質的な力を感じる。
そしてそれに加わるRADWIMPSのBGMと劇中歌の数々。
この二つのシナジーは正直反則技だ。

絵と音楽の力で魂を鷲掴みにして無理矢理震わせてくる。気付けば感動の連続である。ある意味すごく映画的な映画だ。

つまりこの作品の良い見方は「あまり頭を使わずに身を委ねること」なのだろう。
フラットな感覚を準備できれば新海誠という変態が観客に施す愛撫は天才的だ。
頭で理解するよりも早く、鳥肌が全身を駆け巡る。
「僕の心が僕を追い越したんだよ」というのは、こういうことなのかもしれない。
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