停滞

君の名は。の停滞のレビュー・感想・評価

君の名は。(2016年製作の映画)
4.2
新海誠の作家性として思ったのは、現実を模倣した写実性や美麗な画面づくりではなく、ここじゃないどこか、自分じゃない誰かを想うことにより生じる意味、表象されざる部分にまで伸びていくダイナミズムではないだろうか。

物語的な筋書きはあれど、そのメカニズムとなる人物の動きはもっぱら記憶や想念が原動力になっている。入れ替わりはファンタジー的な世界の構築というより、そこから二次的に発生し二人を交差させる記憶が重要な機能だったと思われる。記憶により何かを求め、記憶自体を求める。それは価値観が多様化し一元的な方向性を失い、ここじゃないどこかを求める現代の人に共通するものがあったのだろうか。

物語をあまりに効率的に、簡単なショットを繋げセリフを入れることで語ってしまったため、radwimpsを含む挿入される音楽に頼ってる点は評価できないが、尺的にしょうがないとも言える。他にも流れ的に映画らしくない部分はあったけどまぁいいんじゃないでしょうか。映画の力を引き出しつつも純粋に映画的なものにしようとはしていない、商業性との兼ね合いのため犠牲にしたというより上手く統合されていると思う。これがヒットしたのは大いにうなずけるるるるる。

P.S. このやり方には尺という制約がある為、秒速5cmや言の葉の庭は浅薄なものに終わってしまった感がある。後半のミツハは言の葉の庭の先生に似てましたよね。サマーウォーズっぽさを感じた人もいますよね。
停滞

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