伊達巻

パラドクスの伊達巻のレビュー・感想・評価

パラドクス(2014年製作の映画)
5.0
まさかのど傑作。やることぜんぶやっといて振り出しに戻すという嘘みたいな豪快さ。「人生は一本道である」という言葉も(真実だけが置き去りにされて)根本的に裏切られ、未知なる時間だけが無情に体感されてゆくという耐え難い残酷さ。もはや時間の流れだけを頼りに生きている最近のワイにとっては見るべき世界を見させられたいう気持ちになる。しかしこれってけっこう普遍的なメッセージにも繋がるし、映画もちゃんとそれをやっている。若者は未来を見て、老人は過去を見る。これについても今の俺はどっちだろうと思う。そもそものアイデアが面白いシュチュエーションスリラーだが、もはやそっちが後付けだったんじゃないかとも思わされる物語の濃厚さに文句なし。表面的に同じ質かそれ以上の質で似たような映画はたくさんあるだろうが、これは唯一無二とも言えるキレた仕上がり。この安いジャケットさえなんか逆に良く見えてくる。誰だか知らんが、それはつまり俺でもあり、お前でもあるということか。たまーにある三流企業のPVみたいな映像にはこれまで何度も辟易としてきたが、これに至ってはなぜか爆泣きしてしまった。後悔と憎悪もまるで夢に溶け込んでいくかのように沈々とした記憶。その記憶は、あらゆる時間という概念から解放されたある種の可能性のようなもので、しかしそれは宇宙から見た大きな可能性というよりも、私という存在のなかで選択された/される可能性そのものの小さなイメージのようで不思議だった。多少の説教くささと説明過多なきらいはあっても、上手い具合に作品のカジュアルさにマッチしていて俺は好き。説明過多といっても物語の中で行われる説明の省略というのは美しいと思ったりもするのだが。よう分からんとこもあるが、というかほぼ分かってないが、これは別によう分からんくてもええやつやと思う。もう一回見たら★4.3くらいになりそうだけどとりあえず。かなり良い。この映画で自分の人生についてここまで考えさせられるとは思わなかった
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