Yoshishun

マーターズのYoshishunのレビュー・感想・評価

マーターズ(2015年製作の映画)
2.0
“ハリウッドらしさが仇に”

他国の名作をハリウッドリメイクして成功した例といえば、『ディパーテッド』や『コーダ あいのうた』などが挙げられる。しかし、時にはハリウッドもやらかすことはある。日本特撮の宝であるゴジラを、なんの愛もない恐竜映画としてハリウッドリメイクした『GODZILLA』もそんなリメイクの犠牲者である。同じ日本原作の『ゴースト・イン・ザ・シェル』だってスカヨハや北野武の起用も虚しく大コケしてしまった。ハリウッドが手掛ければ必ずしも傑作になるわけではない。

さて、本作についてはどうか?

オリジナル版は、パスカル・ロジェ監督のサディスティックな嗜好が爆発し、宗教めいたクライマックスが苦手ではあったものの、鑑賞後に妙な気持ち悪さを植え付ける拷問映画だった。

どう考えても負け戦なのだが、ジェイソン・ブラムが製作となれば、意外にも当たりではないかと期待させる。ハリウッドリメイクではないにしても、往年の名作ホラーを現代に蘇らせてきた凄腕なのだから、オリジナルの残虐性や不気味さも受け継いでいるはず。

しかし、Filmarksでの爆死の通り、やはりあの凶悪映画をジェイソン・ブラムで以てしてもうまく調理できなかった。オリジナルのもつ残虐性は鳴りを潜め、代わりにハリウッドらしく少女の過去や説明台詞が多くなり、神話性さえ感じさせた物語が、極々ミニマムなものに変貌を遂げてしまった。

オリジナルと大筋は変わらない。しかし、リメイク版は説明過多かつ演出が安っぽいだけでここまでつまらなくなってしまうのかと驚くばかり。特にオリジナルでさっさと済ませていた前半部分を長々と30分以上も引き伸ばしたり、直接的なグロ描写は隠し恐怖を煽るため取り敢えずヒロインにギャーギャー叫ばせるという安易な恐怖演出がとにかく寒い。首謀者となる富裕層らも見た目のインパクトに欠け、如何にもハリウッド印の安心安全に気を遣った変更がされてしまった。

オリジナルより残虐性を薄めに、取り敢えずメッセージ性だけ残してハリウッドらしくリメイクしたことで薄味になってしまった本作。『ザ・レイド』のハリウッドリメイクが未だに音沙汰なしなように、やはりハリウッドは何でもかんでもリメイクする風潮もどうかと思える、そんな劣化版『マーターズ』だった。
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