MasaichiYaguchi

KUBO/クボ 二本の弦の秘密のMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

KUBO/クボ 二本の弦の秘密(2016年製作の映画)
4.3
「コララインとボタンの魔女」等のストップアニメーションを手掛けたスタジオライカの最新作は、古き日本を舞台に不思議な力を持つ三味線で折り紙を自由に操れる片目の少年クボの冒険譚をファンタジックに描いている。
ハリウッドが古き日本を描くと、何処か中国や韓国のような感じが入り混じったりするが、この作品は日本の文化や風習をよく理解し、その中にある“心”まで描き込んでいる。
だから本作を観ていると、途中からハリウッド製アニメーションであることを忘れ、幼い時に親しんでいた人形劇の世界にいるような懐かしさを感じる。
本作の撮影で実際に使ったクボをはじめとした主要キャラクターのパペットを間近で見たが、細かいところまで作り込まれていて感動さえ覚える。
この丁寧な“手作り感”はパペットだけでなく一つ一つのシーンにまで及んでいて、僅か3秒のシーンを撮るのに1週間も費やしているとのこと。
上映時間103分のこの映画は、気が遠くなりそうな根気と努力の賜物で出来ている。
だから、製作スタッフの作品にかける熱意や情熱がスクリーンからストレートに心に伝わって来る。
日本のお伽話のように美しい自然に恵まれた地方を舞台に、不思議な力を持つ少年とその母、サルやクワガタの侍、少年を執拗に狙う闇の姉妹、月の帝、そして善良な村人たちによる物語で語られるのは家族の絆やその愛。
クボの出自や母の秘密、母と父との出会いやその後のエピソード、クボを付け狙う者たちの正体、これらの謎が終盤で解き明かされていく。
そして、作品の重要なモチーフである三味線は三弦なのに、原題も邦題も何故「二本の弦」なのかが最後で分かる。
片目の少年を主人公とした冒険ファンタジーアニメーションなので、如何にも子供向け、ファミリームービーのように思えるが、作品の中心にある、闇さえも光に変えてしまうようなヒューマニティーや、作品に込められた温かいメッセージは大人の心も揺さぶり、心地良い余韻を残す。