YUKI

ダンケルクのYUKIのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.7
この映画はストーリーに感情移入などするものではない。反戦映画でも、戦争を讃える映画でもない。
ダンケルクからの脱出・救出を図る兵士達の1週間、1日、1時間をただ淡々と観させられる映画であり、私たち観客は戦争の最中に放り込まれながらも無力な傍観者として存在するだけだ。

それなのに何故、涙が溢れて止まらないのか。

戦争の極限状態は人間の感情を丸裸にする。
ダンケルクに追い詰められた兵士達はみな必死に、ひたすらに必死に、故郷に帰りたいと願う。
一方は戦う覚悟を決め、また一方はもがき逃げまわり、何度も何度も危機にさらされて、心にも身体にも傷を増やしていく。
それでも生き抜かなければ。故郷に帰らなければ。仲間を一人でも多く救わなければ。登場人物たちが持つ想いの強さに心揺さぶられる。

戦うことが正解ではないし、逃げることが過ちでもない。
仲間と共に生き抜こうとする”必死さ”に優劣などつけられないのだという事を思い知らされる。

彼らがそれぞれに抱く想いがただひたすらに真っ直ぐで、涙が溢れて止まらない。
悲しみでも感動でもない、やるせなさとも達成感とも言えない、傍観者としてそんな気持ちのままに、涙が止まらなかったのだ。
YUKI

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