中庭

ダンケルクの中庭のレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
1.8
冒頭の市街戦をかいくぐった先に広がる絶望の砂浜へと至る一連の空間的な演出は冴えていたように思う。
それだけに、極限状態における人間の時間感覚の生理の矛盾を、モンタージュと突飛な構成によって婉曲的に結晶化させようとするあの痛ましい試みを取っ払い、一つひとつの場面を丁寧におさめてダンケルクという場所性の構築に努めればよかったのに、と悲観的な思いに駆られる。
海面を斜めにとらえて迫力を演出するような自制のきかない撮り方を我慢出来ずに本編へ組み込んだり、燃え盛る戦闘機がブラックアウトした直後に「ひと呼吸」の拍動に合わせて青年の姿を瞬間的に浮かび上がらせるなど、映画を信じていないような振る舞いが随所に立ち現れては消えていく。
終始鳴り続けるあの音楽を消したらあるいは、と感じてしまう場面も多かった。新聞に載った青年の顔は、文字にパンする前でなく、前後の順番を入れ替えるべきだったと思う。
兵士たちの匿名性とワンダイレクションの彼がぶち込まれたことについて(重油まみれ、顔面では国籍が判らないサスペンス、帰港した先で物資配給の老人男性に顔を撫でられる、駅で待っていた国民たちに顔を見せられないetc)など、どこかで議論でも巻き起こっていたりするんだろうか。
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