くま一家

スーパーマン、スパイダーマン、バットマンのくま一家のネタバレレビュー・内容・結末

4.1

このレビューはネタバレを含みます

控えめなトーンの全体から、最後にふわっとエモーションの昇華。アーロンが「内緒」にしたものと同じくらいの、さりげなく、でも思いのめいっぱい詰まった作品だと思いました。
夜更けにYouTubeで観賞(原語、英語字幕)。



以下、完全にネタバレ。







考察として。
バットマンが出てこない!という意見。自分もそう思いましたが、でも。
オープニングから家の壁やドアに貼られた、アーロンが描いたお絵かきの数々。きっと、母が病に倒れる前から、ずっとアーロンが紙に向かって何か描いているのは日常だったのだろう。病院に向かう前に父がアーロンに袋に何を入れたのか尋ねると、アーロンは「内緒!」と言う。息子が何してるか気にしている父親なら、何を描いていたか見ていたかもだが、この父親はピンと来ていない。アーロンが何か描いているのはいつものことで、しかも妻が倒れた一大事と息子一人の世話で頭はめいっぱい。
でもアーロンは小さな頭と心で状況を理解した。母が倒れて、急遽入院。拡張型心筋症(などの心臓病)で、日常生活には戻れず、希望は心臓移植のみ。父から、あるいは医師から「ママは心臓が悪くて、誰かから心臓を貰わなくちゃ元気になれないんだ…」と聞いたはず。(ヨーロッパ言語圏では「心臓」と「ハート」は同単語。英語はheart、ルーマニア語はinimaだそうです。)
だから、アーロンはハートを描いた。ママにハートを届けたい。多分、たくさん時間かけて。試行錯誤して、様々な色で。父も気づかないうちに、いっぱい。だって彼の「最高」なことは「いっぱいある」ことだから。オレンジも「いっぱい買って!」。だから、ハートもいっぱいあれば、元気になるよ!って。
父と医師が話してるのを聞いた「心臓移植が必要ですが、いつになるやら、明日か一年後か…」それなら僕のハートを早く届けなきゃ!とアーロンは駆け出す。

おそらく原題の意味は“(You're not)(あるいはEven if there's not) Superman, Spiderman, or Batman”。アメリカンコミックスーパーヒーローBig3(これには諸説あるかもだけど)を引き合いにして、スーパーマンのような力持ちでもなく、スパイダーマンのような特殊能力もなく、あるいはバットマンのようにお金持ちでもない。「スパイダーマンはマンガだろ?」って父は口走る。この絶望を救ってくれるスーパーヒーローなんて現実じゃない。
でも、ママにとって、そして父にとって、本当にいるスーパーヒーローはアーロン、お前だったよ。「僕は強いよ!」ってバスで言ってたもんな。ホントだよね…。

って作品かと思いました。
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