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市民ルースのmareのレビュー・感想・評価

市民ルース(1996年製作の映画)
3.5
センシティブであると同時に解放された自由意志への尊重も同居した現代に刺さる二項対立。ペインの長編デビュー作にして、辛辣なテーマとローラ・ダーンの爆発力のあるキャラクターから切れ味鋭いユーモアの両立を果たしていて器用な映画だった。側から見れば本人の意思を無視しながら、肥大化したアイコンに仕立て上げられていく悲劇ともいえるが、その前に辿り着くべき生活があり、皆と同じく普通に生きたいという執念が彼女を突き動かしていて、悲観的にはならず反骨するエネルギーがあった。何度もシンナーを吸って逃げたり、目の前のビッグマネーに簡単に揺らいだりと周囲から責め立てられる弱さはあるにしろ、それが正直さでもあるし、そんな人間でも守られるべき権利は当然のようにあるからこそ、ラストカットの軽やかさが胸を打つ。
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