半兵衛

テンションの半兵衛のレビュー・感想・評価

テンション(1949年製作の映画)
3.7
妻を他人に奪われた夫が他人に成り済まして寝取った男を殺そうとする前半は「メガネをコンタクトに変えただけで別人になれるかな…」と疑問をもったが、そうした雑な部分が後半サスペンスの道具立てとなり物語をスリリングにしていく手腕に舌を巻く。そのうえ中盤から予想外の出来事が次々と起こり、それを捜査する刑事のキャラクターが食えない人間というのもあり物語の結末が読めず終始ハラハラさせられた。

殺害のため夫が偽装した人物を巡るドラマは先日鑑賞した『市子』とダブる部分が多くて、思わずニヤニヤしてしまった。でも『市子』の場合は女を男を探すのに対し本作は女性が好きになった男を探すというスタイルで、すぐにあわてふためく男と違いいざというとき腹をくくる女性の芯の強さを改めて感じた次第。

でも悪妻キャラのオードリー・トッターがグロリア・グレアムを模倣した演技をしていたのがわざとらしくて少々気になった、彼女が誘惑するたびに流れるBGMもドリフのコントみたいで苦笑してしまう。もう一人のヒロインのシド・チャリシーの方がいい女っぷりを披露しているだけに尚更気になった。

ラストも少々強引で残念だったけれど(多分あの刑事だったら別の証拠を握っていそうだが)、それなりに決まっているのでまあいいかという余韻に。

捜査を担当する刑事二人の飄々としつつしたたかなキャラクターがドラマに緊張感とユーモアをもたらし盛り上げる、貰ったポップコーンの件で爆笑させ重要参考人に優しく接しつつ徐々に追い詰めていくベテラン刑事っぷりに感心。
半兵衛

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