グラッデン

シング・ストリート 未来へのうたのグラッデンのレビュー・感想・評価

3.9
アイルランドのダブリンに暮らす主人公が、1つ年上の女の子をMVに出演させるため、学校の同級生たちとバンドを結成する物語。

旅行中の機内プログラムで鑑賞した作品。近年の邦画市場においても存在感を見せるティーンズ向け作品に位置付けは近いかもしれませんが、個人的には好感触の内容。

特に、主人公を率いる、バンド「シングストリート」のメンバーの"俺たち"感が良かったです。それぞれに特徴のあるキャラでもありますし、良い感じに背伸びをしている感覚も含めて、憎めない存在だったかと思います。

「好きな子に振り向いてもらうため」といった不真面目な(しかしながら非常にありふれた)理由でバンドを結成した主人公ではありますが、音楽に造詣の深い兄や仲間たちとは制作活動に真摯に取り組む姿勢は一貫して描かれていたことから、キッカケが必要だったようにも感じました。

つまり、根本にあったのは、誰かのために、ではなく、音楽を通じて両親や学校といったものの束縛を振り払い、自分の存在を自由に表現したいという思いが秘めていたのではないかと。

一方、当初は「高嶺の花」に思えたヒロインとの距離感が狭まるにつれて、彼女のために、という思いが強くなることもわかります。

バンド活動、ヒロインの関係性、自身の秘めたる思いの3点から考えてみると、物語の終着点は、急展開にも感じましたが、あるべき位置だったかもしれません。

ツッコミどころは、なきにしもあらず、ではありますが、それを言うのは野暮ということで、この作品を通じての背伸び感を受け止めてあげるのが、あるべき姿勢かなと感じました。