Cezan

ダゲレオタイプの女のCezanのレビュー・感想・評価

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
4.2
「映像は一瞬を切り取り、写真は永遠を切り取る」
とはよく言ったもので、写真本来が持つ説明不可能な魔力というのは、ある種狂気的で、異常で、ゾッとするものである。

それが、写真の起源である「ダゲレオタイプ」であれば尚更で、人生の一部分を切り取って永遠に、銀版の中に封じ込める行為はどうしてもオカルトの粋を出ない。

現代が舞台だが、ファッション写真を捨てあくまでこの形式美に拘泥する父親の異常なまでの愛、筋肉弛緩剤を飲まされて疲れきった娘の姿は古典的で、それゆえにフランス映画然としたホラーをひしひしと感じさせる。

しかし監督はクロサワである。
派手な演出やあからさまな表現は一切避け、掴みどころのない恐怖と、いつまでも感じの悪い不安が中盤から雪崩のように映画を覆う。音楽もジャパニーズ・ホラー。
女優の目が(正確には目だけが)ピクピクと動くのも人間味を帯びてなくてすごく気持ち悪い。
写真に人生を狂わされる家族と、1人の男の物語。
邦画がすごい!とか言われている裏で、こんなものをひっそり作っている監督は、なんというか、変態ですね。
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