亘さん

ダゲレオタイプの女の亘さんのレビュー・感想・評価

ダゲレオタイプの女(2016年製作の映画)
3.7
日本のホラー映画の第一人者、黒沢清監督の最新作は全編フランス語でフランスにて撮影されたジワジワくるホラー作品。フランス語だから今までとどう違うのかと思ったけど、登場人物がフランス人になっただけで、黒沢節炸裂でザワザワした。
『クリーピー 偽りの隣人』が公開されて1年に2本も黒沢作品を見られるとは思わなかった。『ダゲレオタイプの女』は『クリーピー』よりも『岸辺の旅』に近い感じがある。

郊外の大きな屋敷でダゲレオタイプという世界最古の写真技法を使う写真家のステファン、彼の元にやってきた無職の青年ジャン、ステファンの娘のマリー。マリーは父親の写真のモデルをしている。露光時間が60~70分あるので器具に固定されて動けない。そのマリーに恋をしたジャンだが、屋敷の地上げに乗っかって一儲けしようと企てる・・・という話なんだけど、マリーの母の幽霊を見る父親がどんどん錯乱していく。マリーの母は何故執拗に父親の前に現われるのか、マリーは生きているのか死んでいるのか。ここら辺は「なんとなく不気味」っていう黒沢清得意の演出で本当にゾワっとした。

このマリーを演じてる女優さん、アップになると目が細かく左右に揺れているんだけど、どうやらそういう体質らしい。これがものすごく不気味!見てるとメチャクチャ不安になってくる。
あとは黒沢作品って『岸辺の旅』『クリーピー』もそうだったけど、印象的なカーテンや壁が映ってる部屋は「この世のものでないもの、又は関ってはいけないもの」が必ずいるという法則なのかなと思った。前2作の特徴的な照明効果も使われてた。
それと今作は心臓の鼓動や足音、風の音など、繊細な音の演出をしているので、必ず携帯やスマホの電源は切ってほしい。ラストシーンで携帯で大音量を鳴らされて非常に腹が立った。

『アンフレンテッド』『ライト/オフ』みたいなドカーンと怖がらせる海外のホラーもいいけど、何となく怖い・見てるとどんどん不安になってくる地味にゾワゾワするホラー作品もやっぱり面白い。
亘さん

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