イチロヲ

昼下りの情事 変身のイチロヲのレビュー・感想・評価

昼下りの情事 変身(1972年製作の映画)
5.0
貧困層の家族を身ひとつで支えるため、OLと娼婦のふたつの顔をもっている女性(青山美代子)が、行きつけの生花店の青年(風間杜夫)から愛憎を向けられてしまう。女性の二面性のドラマと青年の葛藤劇を同時進行させている、日活ロマンポルノ。

主人公の女性は、病弱な親と小さな弟たちを養うために、OLと娼婦のふたつの顔を持たざるを得ない境遇に置かれている。しかし悲嘆に暮れることはせず、両方の職業にプライドをもって従事。「Let it go!」(流れに沿って進め!)している。

風間杜夫演じるのは、沖縄から上京して来た朴訥な青年。兄(高橋明)は前科者であり、セックスレスに喘いでいる兄嫁(絵沢萠子)に翻弄されるばかり。女性のしたたかさに猜疑心を向ける、未熟な青年としての説得力に秀でている。

「聖性と娼婦性」「Let it go!」という、ロマンポルノの本質が鮮やかにスケッチされている作品。若年期の筆者にロマンポルノの醍醐味を最初に教示してくれた作品でもあるため、個人的に思い入れがある。いわば、筆者にとっての「カルト映画」。
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