MasaichiYaguchi

君がくれたグッドライフのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

君がくれたグッドライフ(2014年製作の映画)
3.7
「人生は旅」と言われるけれど、人力によって移動する自転車の旅を描いた本作を観ると、改めてそう思う。
本作で自転車の旅をするのは、主人公ハンネスとその妻キキ、弟のフィンや古くからの親友たち。
彼らは年に1度の恒例行事としてこの旅を開催しているが、今回の幹事である主人公夫妻が選んだ旅先はベルギー。
このベルギ―への旅には夫妻の隠した重要な目的がある。
「旅の恥は掻き捨て」とばかり、気のおけない仲間とのそれは楽しいものだが、ハンネスがALS(筋委縮性側索硬化症)に罹患していることが判明してから彼らの旅は様相を変えていく。
たとえ自分が罹っていなくても、身近な人がALSという不治な死の病と向き合っていたら、生きるということについて見詰め直し、限られた時間の中で人は愛する人や大切な人々に対し何が出来るのか考えてしまう。
映画で描かれた自転車での5日間の旅は短期間だったとはいえ、晴れの日もあれば、移動出来ないような雨の日もあり、思わぬ伴走者をはじめとした様々な出会いやエピソードを生んでいく。
短くても良き伴侶に恵まれ、金持ちでなくても心豊かに、そして親しい人々と悲しみや喜びを分かち合えたら、旅も人生も実り豊かなものになると思う。
そして、その人がいなくなっても、周りの人々の心にその思いをはじめとして存在が何時までも残ることが出来たら、その人が生きた証しになるのではないだろうか。
この作品のラストシーンを観ていて、そんな思いに掻き立てられました。