Yuho

スイス・アーミー・マンのYuhoのレビュー・感想・評価

スイス・アーミー・マン(2016年製作の映画)
1.7
この作品は主人公のハンク(ポール・ダノ)が漂流して助けが来ないことに絶望していたところ、死体(ダニエル・ラドクリフ)を見つけるところから始まります。ハンクは死体をスイス・アーミー(万能物)のように使い、サバイバル生活に突入していく、というお話です。

終始「何を観ているんだ私は」の気分でした。
ハリーポッター観たことない私は後にエニーと名乗りだす(そもそもなんで喋るのかわからん)死体を演じたダニエルくんに感動することもなく。死体の腐敗ガスでジェットスキーを始めた瞬間に( ゚Д゚)←こんな顔になって。
「あぁ、これがジャケットのシーンか」ってなりつつも冷静に状況を考えようとする私と、すでに思考放棄した私が戦いはじめ、「まぁ後から面白いって思うだろ」と何とか飲み込む。
次の死体トンデモ活用法はなぜか死体の口から湧き上がる水。吐き出される水。とめどない水。( ゚Д゚)( ゚Д゚)←こうなりました。っていうのも、腐敗ガスってくらいならまぁもしかして私が知らないだけであり得ないわけじゃないのかな…(知らんけど)っていう絶妙なフィクションラインを突いてきたわけなんですけど。いやいやいや、水はそんなに出てこないだろ。マーライオンも驚きの量だぞ。どうした?

そして挙句の果てに死体が喋り始めます。そしてエニーと名乗るんですが…「え?これホラーだっけ?コメディなんだよな?いやコメディだから話すのか?にしても主人公、喋る死体への順応早いな!」ここまで一息。
最悪ジェットスキーとマーライオンはコメディってことで許しますが、なぜかここで私に許せないポイントが訪れました。
「死体は喋っちゃダメ!!」
…いや別にいいんですけどね、映画で何しようと自由なんですけど。死体がもし喋らずに、それこそ万能道具としてシュールにただ使われていく映画を想像していて、たぶんそれであれば許せたんですよ。でも、ここでエニーに喋らせてしまい(しかもめっちゃ語ってくる)、終始会話ベースでしっかり話が進んでしまうことを知ったとき、私は言い知れない虚脱感を覚えました。「なーんだ、そういう感じか」っていう気持ち。

基本的に私はコメディを観てげらげら笑うタイプじゃないんですけど、クスリとできるポイントはちゃんと探してはいるんです。個人的には死体の口に容赦なく物を突っ込んで銃のように使ったり、延々と吐き出される水をシャワーにしたり、面白いとは思っていました。でもこの道具としての死体はあくまで「道具」であってほしかったっていうのが本音です。「人間」になってしまったことで、「道具」としての価値や面白さが薄れてしまったように感じました。

加えて後半はエニーの欲求を聞き入れていくハンクの姿を観て「何をしているんだ」という気持ちが増長されました。ハンクがやっていることは面白いことというより可笑しいことのような気がしてしまい、でもその行動の根幹にはエニーを「人間」として扱おうとする気持ちがあって。これはコメディなのか?という気分になる後半。コメディじゃなければなんなのかと言われると難しいんですけどね。ラブストーリーではないけどドラマってほど濃いわけじゃない、結局コメディって言葉が一番収まりいいけどそれほど面白みもない。「なんだこれは」の気持ちはそういう感情の終着点でした。

最初のジェットスキーが最高に「意味不明。けど面白いかも」を感じる場面で、物語が進むにつれて「面白い」が消えていってしまったことで尻すぼみになった印象でした。観終わった後に爽快感が一切なかったという。

ただし、主演のポール・ダノは良かったです。どっかで観たことあるな~と思っていたら『プリズナーズ』で出てきたあの気持ち悪すぎるおっさんか(失礼)!!情けなさと純朴さを兼ね備えて適度にきもい主人公をしっかり演じていて、存在感があるな、と思いました。そもそも『プリズナーズ』観てからもう結構経つのにポール・ダノ覚えてるって時点で強烈だったんだろうな。
そしてみんなのポッターくん。ごめんよ観たことなくて。初めてお会いする作品がオナラで大活躍する作品になるとは。「エクスペクト・パトローナム!」って言ってる君に会いたいよ。メイクのレベルがものすごいし、表情の作り方(どこまでが自力なのか本当にわからない)も秀逸。役者としてのレベルの高さは非常に感じられる一作だったと思います。

或る意味忘れない映画になりました。内容はほぼないと思ってもいい…かも。好きな人はごめんなさい。
Yuho

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