Yuho

ベニスに死すのYuhoのレビュー・感想・評価

ベニスに死す(1971年製作の映画)
3.3
老作曲家・アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)は静養のため、ベニスのホテルを訪れる。そこで出会った美青年・タージオ(ビョルン・アンドレセン)に理想の美を感じたアッシェンバッハは、滞在の中、彼に目を奪われ続けることになる――


皆さん、明けましておめでとうございます。2022年一発目の映画はこれにしました。
ビョルン・アンドレセンのドキュメンタリーを観たくて、その前にまず本作を、と思い鑑賞。イタリア映画の風情とフランス映画のいい感じの鬱っぽさと耽美感が出ていて、個人的には割と嫌いじゃない映画でした。50年前の映画なのがビックリ。

観るときの年齢やシチュエーションによって感じ方が大きく変わりそうというのが印象の本作。私は20代女性なので主人公とだいぶ境遇も違い共感できかねる場面もありましたが…せめて歳を重ねてから観たらもっと、失われゆく美貌とか活力とかに想いを馳せて、しみじみと感じるものがありそうですね。

台詞はかなり少なく、第2の主人公であるビョルン・アンドレセンなんて2,3行の台詞しかないです。絵画のような「あーフランス映画っぽい」という構成で、ハマれば当時の街の匂いすら感じられそうな没入感が味わえるかと。
ただそんな構成なので、眠いときや流して適当に観るのはお勧めしません。笑

それから50年前のLGBTQとかに比較的理解の薄い時代からしたらかなりセンセーショナルというか、賛否分かれた作品だったのかな、と思います。ちょっと気持ち悪いって思う人が居るのも分からんではないというか。2020年頃になってやっとこういうのに慣用な枠組みが社会的にできてきたような気もします。

人を慕う気持ちは受け取り手がどう思うかによって正当化されるか否かがあらかた決まるもので、端から見たら「気持ち悪い」「重い」「理解できない」ケースが多々あると思っています。タージオがどう思って居たのかは推測の域を出ませんが、彼の拒絶がなかったからこの異質な愛情(慕情?)は作品に成り得たのではないでしょうか。
ただ、ビョルン・アンドレセンがその後たどった道を考えると、決してこの作品が正解だったとは言えませんが…(ここに少し同情してしまって点数が伸びませんでした)

他人から羨ましがられるほどの美しさを兼ね備えた人はビョルン・アンドレセンのように性的搾取の対象にされたり、嫉妬とかの歪んだ感情の捌け口にされたり、何だかんだ大変なことも多いのでしょう。
近い将来に『世界で一番美しい少年』観る予定なので、その時に色々感じたことは書きたいと思います。
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