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パワーレンジャーのEikeのレビュー・感想・評価

パワーレンジャー(2017年製作の映画)
3.0
アメコミ映画がアメリカ娯楽映画界をけん引する現状、各スタジオは新鮮なネタを躍起になって探しております。
結果として少しでも知名度のあるネタにはとりあえず白羽の矢が当てられている状況でしょうか。

さて、東映の「戦隊シリーズ」、初の本格ブロックバスター作ですが、予想通りの部分と意外な要素の両方があり。
個人的には「心配したよりはマシ」というのが率直な感想。
面白いのは日本における「戦隊もの」の対象年齢は小学校で言えば低学年だと思われるのですが、本作のタッチはもう少し上、おそらく10代前半から半ばをターゲットにしていると思われる点。
本作のランニングタイムは2時間を超えていて(121分)お子様にすればこれは少々長すぎるでしょう。

しかし物語の展開を見ると、これは仕方ない雰囲気。
それはヒーロー誕生の経緯をきちんと描いていることと、チームメンバー各自の背景事情も描写しているため。
逆に言えばその部分をなおざりにしなかったことで本作はドラマとしても一応きちんと形は整えられている印象です。
子供向けの娯楽作として考えれば、5人のメンバー各自を詳細に描くかは大きな意味を持たないでしょうが、本作のアプローチは思ったより丁寧。
その部分をどう見るかによって評価は異なってきそうです。

主人公の5人は同じ田舎町の高校に通う「はみ出し者」。
という設定はアリがちですが彼ら(その一部)が出会うことになるのが土曜日の午前中の「補習授業」…とくればもちろんジョン・ヒューズのハイスクールドラマの名作な訳で…。
驚いたことに本作はSFスーバーヒーロー版「ブレックファスト・クラブ」なのだ。

5人のメンバーはそれぞれに事情を抱えておりますがその背景には現代的な要素が多分に取り入れられております。
その最たる点がメンバー5人中に女性が二人(ピンクに加えてイエローが本作では女性キャラクター)となっている点。
その「理由」を現代的な視点とみるか子供向けのヒーロードラマには似つかわしくないドラマ要素と見るか、判断は微妙。
メンバーの人種構成(これは日本版では無縁ですね)にも”配慮”が露骨(笑)。
リーダーである”レッド”は白人でスポーツ万能のヒーロータイプ、”Jocks”って奴ですがその他のメンバーはアフリカ系、元チアリーダー、アジア系にラテン系とかなり戦略的。
その部分をわざとらしいと感じる方も多いと思われますが、それでも各自の家庭描写などが盛り込まれていることもあり、それぞれのキャラを確立させる努力が見えるだけましという気もします。

主人公たちを17才前後の若者たちにしたことはターゲットとなる視聴者へのアピールと「学園ドラマ」のフォーマットの利用というメリットから理解できます。
反面、その枠組みからは大きくはみ出すこともない訳で作品の個性という点では物足りないものがあります。

只の「マンガ映画」であるはずの物語をシリアスなドラマの切り口を使って描くというのは「ダークナイト」症候群とでも呼びうるトレンドですかね。
本作に関して言えば、ドラマ部分をおろそかにしない態度には好感を感じる一方で、ドラマとアクション・スペクタクル部分との融合が成功しているかどうかは…意見が分かれそう。
特に戦隊ジャンルの魅力であるはずの脳天気さが本作には薄く、恐竜型ロボットZord、そしてメガゾードといったギミックの活躍とはかみ合っていないような気がします。
高校生を主人公としながら予告では盛り込まれていたロマンス色はほぼ割愛。
その点でも煮え切らない物を感じました。

製作費は1億ドル=110億円以上かかったそうですが興収面では満足いく結果は出なかった模様です。
ただ、フランチャイズの関連商品はバカ売れしたらしく、その点を考慮すると続編・リブートの可能性は残されている模様です。
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