MasaichiYaguchi

シマウマのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

シマウマ(2016年製作の映画)
3.3
決して口当たりの良い作品ではない。
激辛というか、口の中が切れてザラザラと鉄の味がする。
この作品で描かれるのは“回収屋”。
一般に回収屋というと、古新聞や古雑誌、不用となった家電品やパソコン、オートバイや自転車を回収する業者を思い浮かべるが、ここでは人が抱えた恨みや憎しみを、依頼人に代わって晴らす者達を指す。
小幡文生さんの原作漫画を映画化した本作は現代版「必殺仕置人」とも呼べるものだが、一つ大きく違う点は基本的に“対象”を殺害しないこと。
ただ殺さないとはいえ、死ぬ以上の責め苦を圧倒的な暴力で相手に与えていく。
血を見ることや残虐シーンが苦手な人は、観ている途中で気分が悪くなってしまうと思う。
主人公ドラ役の竜星涼さん、同じ回収屋の一員、アカ役の須賀健太さん、同じくキイヌ役の日南響子さん、ドラの恋人・綾役の高橋メアリージュンさんの主要キャストが体を張って演じていて、その熱が血飛沫と共に飛んでくる。
この作品には安っぽい正義も優しさも無い。
コンクリートで囲まれた都会の食うか食われるかの生存競争の中、敵意や悪意、嫉妬や憎悪渦巻く社会の底辺、そのアンダーグラウンドで暗躍する者達の全てを突き放したような虚無感、ハードボイルドな世界が広がるばかりだ。
本作は、平和ボケし、社会の潮流に押し流されている我々の生温い日常に潜む開けてはいけない扉の先の世界を、頭をハンマーで殴られたような衝撃と共に垣間見せてくれる。