ジロ

ラスト・タンゴのジロのレビュー・感想・評価

ラスト・タンゴ(2015年製作の映画)
3.9
いやー、よかった。とてもよかった。
ドキュメンタリーと映画の素晴らしい融合。ドキュメンタリーと思って敬遠してる人にもぜひ観てほしい。
フアンという1人の男に惚れて、そしてタンゴのために生きたマリアという女の話。
80歳になる彼女はシャキッと背筋が伸びていて、タバコをふかす横顔がカッコいい。でも、1人の食卓はほんの少しだけ影を落としていて寂しそうに見える。
対して83歳になるフアンはマリアを捨て家庭を持ち、目は死んでいるけれど一般的な幸せを掴んでいる。
憧れるのはもちろん芸術と愛に生きたマリアの方なんだけれど、なかなかこの選択は難しいんじゃなかろうか。
マリアは「タンゴは数年くらい待ってくれる。だから子供を産んだ方がいい」と話す。本当はフアンとの子供を産みたかったんだろう。
フアンにとってマリアはあくまでタンゴのパートナー、ビジネスパートナーに過ぎなかったと伝わってくるのが悲しい。
それでも何十年にもわたりペアを組み続けた2人の間には確かな絆があるように感じた。
愛した分だけ、憎しみながら踊るタンゴ。

現役のタンゴダンサーたちによるタンゴ再現シーンは見応え抜群!
若い頃の2人を演じたダンサー2人のツヤめきといったら…キレイな足、肌、キレのある動き。
壮年時代役の2人は円熟した色気に満ち溢れているし、もう、とにかくみんな素晴らしい!
タンゴシーンがとにかくかっこよくて、釘付けになって観てしまった。

ラスト・タンゴではじまるこの映画のラスト、エンドロール前のシーン。
マリアとフアンが舞台上ですれ違って去って行く。
完璧な幕引き。
ため息が出るほど素晴らしい…

タンゴは今まで全然興味がなかったけれど、一度観てみたくなった。

久しぶりの早稲田松竹にて。スクリーンで観られて良かったと思える映画だった。
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