都部

ドラえもん のび太の太陽王伝説の都部のレビュー・感想・評価

3.4
ドラマとしては『王子ティオの成長物語』として、ユーモアとしては『現代と古代のカルチャーギャップコメディ』として、この一体となった二つの面白さを確保している本作は優等生さながらで、ドラえもん映画特有のSF的ガジェットの小粋な行使には欠けるものの概ね良好の味わい。

尊大で傲慢な態度を取るティオこそが、この映画の主人公であると断言しても問題ないほどに物語は彼の内面的成長に寄っていて、のび太の母親とのユーモラスな掛け合いが病身の母に対する思慕に繋がるなど意味の持たせ方が丁寧だ。現代の車やテレビに驚くといった反応の数々や自分の価値観が通じない相手との接触が、イエスマンに持ち上げられた彼の性格の軟化に繋がる理屈も分かるし、マヤナ国の臣下の自分に対する陰口を聞いて眠りに着く母に弱音を吐いて縋るシークエンスは特に印象的。

それと比較するとのび太の物語は入れ替わり物の規範をただ熟すばかりで物足りなさがあって、本作の敵役の計画のイレギュラーとしてその状況が活きてくるのは痛快だが、旧ドラえもん映画の終盤の駆け足な決着を考えると無意味な期間がとにかく作品の大半を占めていてこちらはどうにも難色を示してしまう。ただ王子の性格を掘り下げることで、対比的に置かれるのび太の人間的魅力が浮き上がるという構図はなるほどという感じで、二人が肩を並べてサカディに挑むシーンはかなり良い。

生贄文化のひみつ道具による撤廃は、今だと現代的な価値観で異世界の遅れた文化を殴り付けるなろうっぽい雰囲気を感じてちょっと笑ってしまった。
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