なっこ

ゴッホ~最期の手紙~のなっこのレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
3.0
一枚の絵を鑑賞するとき、

あなたは絵の何を見ていますか?

そんな風に問われた気がする。
小さい頃から“館”の付くところに出掛けるのが好きだった。水族館、博物館、美術館、科学館、そしてもちろん、映画館。単に“お出かけ”が好きだったのかもしれない。それでも今でも、誰か特別な作家の名を冠した展覧会を見に行くのが好きだ。

ゴッホの絵には不思議な魅力がある。ピカソのように誰にでもかけるなんて揶揄されない。彼には、一目見ればそれと分かる独特のタッチがある。彼の生涯、絵にかけた情熱が相まって、絵の前では目眩がしそうになる程強く惹きつけられる。本当にクラクラと絵の中に入っていってしまいそうなほど、そういう受け手の気持ちを映画化したら、こうなった、そういう作品に思えた。

大好きな絵ほど何度でも見たいと思うものだし、見る度に新たな発見があるものだ。そして、その絵の中に入っていきたくなる。現実にはそんなことは出来ないけれど、この映画では見事にゴッホの絵の中を旅する感覚が味わえた。

線を重ねていくその筆の往復運動、その画家のかけた時間が絵には塗り込められている、そんな風に絵画を見る人もいる。でも、それだけじゃない。画家がその景色と、描いた人物と、向き合った時間もその絵の中には閉じ込められている。どんな風に見つめ、どんな風に感じたのか。それは、その絵画を見るときに一緒に感じ取るものなのかもしれない。

画家がどんな時代を生き、周囲のどんな人と付き合い、どんな風に最期を迎えたのか、絵画を見る上では頭の中にあるはずの情報。それを一つずつ検証したくなる。謎があればあるほど、強く惹かれる、そして自分なりの仮説を持ちたくなる。これは、ゴッホの絵、彼の人生と人となりにひとつの答えを出そうと力を尽くした作品。私は、この試みがとても素敵なことだったと思う。鑑賞できて良かった。ゴッホをまた少し好きになれたから。
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