紅孔雀

ゴッホ~最期の手紙~の紅孔雀のレビュー・感想・評価

ゴッホ~最期の手紙~(2017年製作の映画)
4.1
世界中から集められた125人の画家が、制作年4年、6万5千フレームを描いて完成させた油絵アニメーション。関係者たちのゴッホへの愛(あるいは狂気?)を感じさせる一作でした。
私は知らなかったのですが、ゴッホの主治医ガシェは挫折した画家で、ゴッホに愛憎半ばの感情を抱いていたそうな。こうした天才と凡人の相剋は、天才モーツァルトに対する凡人サリエリの嫉妬&絶望を描いた『アマデウス』を想起させます。
しかし、天から才能を授かった者は重い宿命をもまた負います。ゴッホと親しかった貸しボート屋の主人は、画家の心象をこう表現しますーー「どれだけ孤独なんだ、カラスに慰められるなんて」そう言えば最晩年の作『カラスのいる麦畑』でもたくさんのカラスが翔んでましたなぁ。
本作、あまり有名俳優は出てないのですが、「彼は天才だったのよ」と述懐するマルグリット(ガシェの娘)の声をシアーシャ・ローナンが担当しているのを発見。これはちょっと嬉しかったです。
ゴッホの死をめぐる作品なのですが、その謎(自殺or他殺?)の解明がもうひとつハッキリしないのが不満と言えば不満。それで4点台前半になりましたが、注がれたスタッフの情熱は優に「満点」だったと思います❗️
PS : 『ゴッホの手紙』と言えば、我が敬愛する批評家・小林秀雄氏の同題の評論が有名です。氏はこの薄幸の画家に「キリストに近づこうとした故の挫折」を見るのですが、そうした宗教性はこの映画には無かったかなぁ(そこまで描くと焦点がボケるので仕方ないのですが)。ただゴッホの友人である郵便配達人ジョゼフの言葉にはある種の精神性を感じました。すなわち次の言葉ーー「人生は強い者の心も挫(くじ)く」うーむ、深い!
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