もうギバちゃんに妻夫木、んでLOTO 6が頭に浮かんじゃうから勘弁して欲しい。黒衣に身を纏い楽譜片手にせわしなく歌い手達、魂を鎮めるどころかむしろ何かしらの魂を現世に呼び戻そうとしている様に観える、オレンジの壁に浮かび上がる影に戦慄が走る。観衆の拍手喝采、皆が続々と立ち去るなか、寂しげに誰もいなくなった舞台を見つめる少女は何を思うのか…。

ソクーロフの愛するロシアの古都サンクトペテルブルクで行われたモーツァルトの遺作《レクイエム》の演奏会の模様を記録したドキュメンタリー。

《レクイエム》様々な巨匠の映画で度々耳にすることもあり個人的に大好きな曲である。
観客が集まり、音楽に聴き入る。20人ぐらいのオペラ歌手がステージ上で、楽譜を手に持ち、直立不動ではなくステージをゆっくりと歩き周りながら歌唱するオペラ調の演出。オーケストラをステージの下に構え、観客の前線で演奏する。
カメラはひたすら舞台と人々を追う。全編全く台詞のない画面から漂う詩的な映像の迫力に圧倒される。

さてさてソクーロフ監督によるどんなモーツアルト・レクイエムなのかと興味津々。

演奏会場は全くの映画的演出のない「素」の様子で聴衆を映し出す。

演奏が始まると黒い修道僧（モンク）の格好をした男女合唱隊と独唱者が「動き回りながら」歌を奏でる。
それが映画的演出といえばそうなのかもしれず、位置を固定された通常の合唱隊による演奏とは趣が相当異なる。
ただし、それがポジ効果をもたらすものかどうかは何とも言い難いというのが正直な感想。
動き回りながらでは発声に影響するのでは？なんて素人考えが沸き起こったりもした。

その他は小鳥の鳴き声のような音が聞こえてきたが、それについては添付解説書には何も書かれていなかったので、意図的演出なのか、自分の「空耳」なのかは分からない。苦笑

結局、一時間ちょいかけて滞りなく演奏は終わり、聴衆のささやかなスタンディグオベーションとはなったもののそそくさと合唱隊は舞台を後にし、残された聴衆がちょっと映された後にエンドロールとなる。

まぁ―何とも評価し辛いドキュメンタリーではあったが、３０年以上前にモーツァルト・レクイエムを集中的に聴いて以降ご無沙汰していたので、久方ぶりに映像も伴った演奏により聴くことができたのは感慨深い気がした。感謝