カッシー

ザ・コンサルタントのカッシーのレビュー・感想・評価

ザ・コンサルタント(2016年製作の映画)
3.7
惜しい!けどすごく好きなところも多かったです。

主人公クリスチャン・ウルフの表の顔と裏の顔を見せる場面の切り替えがなんとなくヌルッとメリハリのないように感じられたので、覚醒したらマジでヤバイ感が足りなかったような気がします。
裏社会の会計士として働きながらも驚異的な戦闘能力ゆえに消されずに生き延び続けてきたという設定も、そのような描写を直接見せてくれるわけではないのでいまいち主人公が普段どのような活躍をしているのか伝わりづらいし、今回の案件の一筋縄でいかないという映画的なひねりの部分もわかりづらくなってしまっているのは正直見せ方として上手くなかったところですね。
最終的に今回の1番の悪、殺すターゲットがそんなに悪い奴として描かれていない、というか彼が殺してきた奴らがどれだけの悪人かよくわからないというのも乗り切れない理由でした。

でも、主人公に高機能自閉症という設定を与えたことで、周囲との会話の噛み合わなさや普通とは違う何かを抱えている様子など彼のキャラクターに異常性が付与されているのはとても良かったです。
アナ・ケンドリック演じるデイナも弱冠オーバー気味にウザい女という設定にしたことで、主人公が他人とのこと普段の会話で感じているであろう苛立ちがよりわかりやすくなっていて主人公の視線に近づけていました。
アクションシーンもハードな見せ方で緊迫感と主人公が無双する爽快感が演出されていて見応えありです。
また、作中でのキーフレーズである"良い父親であったか?"というセリフや、ラストで明かされるある人物との関係から分かるように、今作のギャビン・オコナー監督の以前の作品である"ウォーリアー"にも通じる、異常な父親との関係ゆえに生まれた兄弟の確執と和解、というただのアクション映画ではないテーマ生を持たせていたのは監督の手腕ですね。
その他、主人公が友情というものを知りかけながらも相手を巻き込みたくないがために立ち去り、気持ちを贈り物で伝えるところなど細かいところの丁寧な描写がかなり好印象でした。

最終的にはとても魅力的な新しい主人公を提示した今作。
もし続編が作られるのなら、ネタバレになりそうなので詳しくは書きませんが、ものすごくおもしろいバディムービーができるのでは?
本国アメリカでは絶賛されているわけではないので続編のゴーサインはすぐには出なさそうですがぜひともこのキャラクターでシリーズ化をしてほしいです。
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