若者の労働と鮮烈な青春に1発K.Oを食らうほどの衝撃を受けた最高の映画。
武満徹が75時間に及ぶテープ録音を編集した素材をベースに、安部公房が脚本を書いた一編。
人がひしめく狭い女子寮に住み込み、パンの製造工場で働き、休日は同僚の友達と一緒に男の子と遊びに出かける16歳のアコの清々しい青春の日々の物語。
シネマ・ヴェリテのようなタッチで描かれ、主演の入江美樹、実験映像のモンタージュの挿入と映像の美しさ、音楽やノイズ、若者の生の言葉等全てが良かった。
『他人の顔』にも出演する入江美樹が主演のアコ役で、1人だけ狂う程美しい。
深夜のドライブで海に行く途中に車が故障し、修理の間、一行が車の前でダンスしたり、少女アコの性への目覚め、白けた明け方にみんな寝坊助で車に乗って帰ったり、青春に心が突き動かさされる。特に居眠り運転目線のブレブレのカメラワークにヒヤヒヤとさせられる。
労働中にベルトコンベアーに乗って次々と現れる膨大なふかふかのパンだねがパンになっていく工程や女工員たちのこなれた手つきが、女を象徴するとも読み取れる心理に相対するような実験映像のような使い方も良かった。
本作は各国共同のオムニバス作品の流行に乗って作られた、4カ国合作『思春期』の日本編。イタリア編をジャンヴィットリオ・バルディ、フランス編をジャン・ルーシュ、カナダ編をミシェル・ブローが監督したが、日本では全篇の正式上映はなかったらしい。
『他人の顔』を鑑賞した以来久々に食らった。戦後の日本の芸術を一身に開拓し牽引してきた彼の作品はこの先もずっと観返してはいつまでも痺れていたい。美しさの真骨頂。