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リトル・マーメイドのmitoのレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
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2023年69本目。
ディズニープリンセスの黄金期「美女と野獣」「アラジン」に続いての実写化。
子供の頃、この3作でディズニー作品に触れ、何度も見返した身としては毎度の事ながら複雑な心境。

公開前に主演の人種が議論を呼んでいた本作。
個人的にはその点以上に「ロブ・マーシャルが監督」である事が懸念だったのだが…。

まずは主演のハリー・ベイリーの件。
白人だったアリエルを黒人のハリー・ベイリーが演じた事で「これはホワイトウォッシュならぬブラックウォッシュでは」と議論を呼び、更にアリエルが赤毛というマイノリティな存在故にマイノリティがマイノリティを潰したと言われたり…。

人種云々はどうでも良いけど。
オリジナルが赤毛の白人だったのを丸々変えた違和感は否定出来ない。
シンプルに「オリジナルがあるのに関わらず、それを捻じ曲げるのはどうなの?」という疑問は自分も鑑賞前も後も感じている。

ハリー・ベイリー起用の理由にその歌唱力が挙げられている。
確かに彼女の歌唱力は認めるが、それが人種を変えたことの違和感と天秤に掛ける程の価値があるかは疑問。
実際、オリジナルを忠実に再現したアースラを演じるメリッサ・マッカーシーを称賛する声の方が多いのも個人的には納得というか…、やっぱりオリジナルのファンからそういう声が挙がるのは仕方がないこと。

歌唱力を追求したのは、ミュージカル畑のロブ・マーシャル故なのか…。
(ミュージカルは人種より歌唱力でキャスティングする事が少なくないから)

海の住人達のリアル魚介感は確かに恐さが先行する。でもセバスチャンは若干デフォルメされていたし、見せ場もあったしで結構悪くなかった。

あとハビエル・バルデムは顔面のパワーのせいで、顔だけ海面から出して陸を見つめるシーンは妙に笑いを誘う。
大団円の良いシーンなんだけど、あれは不意打ち過ぎて笑ってしまった。

次にストーリーに関して。
改めて観ると、リトル・マーメイドって美女と野獣、アラジン以上に正統なプリンセスストーリーなんだな、と思った。
王子様に恋して、彼との愛を享受する為に魔女の毒牙にかかるが最後は王子に救われ幸せに暮らしましたとさ…。
てっきり、いつもの現代的アップデートを行ってくると思いきや、本作では少し控えめ…というか、そこまで大筋のコンセプトが変わっていない。
寧ろ舞台設定のために王子側に異様なまでの改変が。
Under the Seaの南国調よろしく、南国の国家(というかスペインか?)で白人の王子を成立させるために「王子は孤児で女王に拾われ育てられた」という謎の設定が。
アリエルの人種を改変したなら、王子こそ白人じゃなくて良かったのでは…。

楽曲も他2作と共通の問題「実写化による機敏な動きの限界」が結構効いてて、テンポが遅くオリジナルの爽快感が欠けるのと、新規曲が他の曲の曲調と合っていないのが凄い気になる。

…まだまだ書けるが、流石にネガティブな感想ばかりになってしまうので、止めておこう。
個人的にはかなり不満の残る作品だった。
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