ロアー

リトル・マーメイドのロアーのレビュー・感想・評価

リトル・マーメイド(2023年製作の映画)
3.6
オリジナルのアニメが大好き過ぎてどうしようもないクソ重感情を持っていることを自認した上で、色々と残念な映画でした。

まず、散散話題になっていたハリー・ベイリー。
彼女には何の落ち度もないんだけど、単純にアニメのアリエルに似てないってことだけが問題なんだってば。

これ、ハリー・ベイリーが黒人だから、否定=人種差別やポリコレ問題として扱われるけど本質は違うよね。例え白人が起用されても全くアリエルに似てない人だったら私、今と同じくキレてるし否定派の人たちって大半そういう気持ちで不満なんじゃないの?
製作陣に対して「これでいいと思ってるなら、他のキャラもアニメに外見を似せようとするなよ!」って思うくらいキレ散らかしてたんだけど、だって何十年も愛されてきたアリエルというあの外見のキャラクターがいて、そんなアリエルが大好きなファンがいて、その人たちに対して全然外見の違うキャストを「これが新しいアリエルだよ」って押し付けるのって裏切りだし、アニメのアリエルに対する否定でもあるし、多様性ってそういうことじゃないでしょ?
ハリー・ベイリーに対してはディズニーの実写化映画に限定したとしても、もっと世間から負の感情を受けずに気持ちよく演じられるキャラが別にあったように思うし、むしろそっちの機会を失った気がして残念に思うくらいなんだけど、なんでこうなっちゃうんだろ?

でも蓋を開けてみたら映画で変わった部分が色々変過ぎて、主役の外見なんて瑣末な事に思えてしまいました。

カニと魚と鳥のことはあえてもう何も言うまい。
ただ、エリックや陛下の追加設定を消化しきれてなかったことにモヤってダメでした。だって「人魚は殺せ!海は危険!」って過激な偏見を持ってた国なのに、あっさりとハッピーエンドが謎過ぎて。
てっきりエリックと陛下の間でもっと波乱があるんだろうと待ってたらないまま終わっちゃって、単なる尺伸ばしと出演者を増やすだけに見えてしまって何だかモヤモヤ。

それと人魚の胸のとこどうなってるん?
そこだけ不自然な形に鱗があるから、皮を剥いで貼り付けたみたいで気持ち悪くなっちゃってダメでした。姉たちの色もギラギラ過ぎた。
足のシーンも何で浅瀬でパチャパチャから海藻ネチャネチャに変わっちゃったのか、岩場に波バッシャーンもその前にアリエルが岩肌をジリジリ登ってるのが変だったし、馬車を暴走させてるのも迷惑だし、天真爛漫で向こう見ずなのと無礼なのは違うとか、細かいところにいちゃもんつけるBBAになってて自分でもヤダー!ってなってるんだけど、妙な現実味を持たせた分、ファンタジーやロマンが削ぎ落とされてて残念でした。

セバスチャンの誇りである「宮廷音楽家」という肩書きも奪う必要あった?全体的に言えることだけど、追加や改変要素で本来なら元々のキャラクター性に厚みや深みを与えるべきところを、キャラの本質からの改変になってしまっていたのが、結局、この映画で一番気に入らないところなんだろうと思います。

でも「♪人魚姫は7人〜」のところの理解が深まったのは実写に感謝でした。オリジナルからして見た目バラバラの姉妹だと思ってたけど、そういうことなのか。トリトン王、7つの海にそれぞれ奥様がいるね?

トリトン王と言えば私、「色々不満だけど、ハビエル・バルデムのトリトン王を観に行くんだという気持ちで映画観てくる」ってずっと言ってたし、その点は満足だったからこんなに文句言っちゃいけないんだった。ハビエルのトリトン王って、あんな立派な体格なのに時々ポツネンとしててかわいかったよね。「人魚には涙がない、だから余計に辛かった」って冒頭の引用も、アリエルじゃなくむしろトリトン王のことだったのか!理解しました。

それとメリッサ・マッカーシーの素顔と持ち味を知ってるからか、あれだけやっても、まだアニメのアースラよりかわいらしさと小物感を感じた。そもそもアニメのアースラの迫力が怖すぎるんだよね。てか、多様性云々言うなら、アースラのモデルと同じくドラァグを起用するくらいのことをすればいいのに。

文句言わないって言った後にも散々追い文句言っちゃったけど、ヴァネッサの再現率が100%だったこと、グリムズビーが5倍くらいイケオジで粋なキャラになってたところは好きでした。
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