Godfather

ブラック・スワンのGodfatherのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
4.2
これはサスペンスというか、普通にホラーだろう。これがホラーじゃなかったら『MEN 同じ顔の男たち』だってホラーではないことになる。

それはともかく、バレエ好きだから、あるいはチャイコフスキー好きだからこの映画を観たという(私のような)人は、予想外の怖さにビビっただろう。

怖い描写のほとんどはニナの見た幻想なんだろうけど、彼女の自傷癖はほんとにあったのだろうし、ラストのあの結末も現実のことなんだろう。そこが『白鳥の湖』のストーリーともシンクロしてるのがいい。

エロい描写も満載だ。自慰の途中でニナがふと横を見ると母がいてビビるシーンはちょっと笑った。よりによって宿敵(?)のリリーの肉体を求めてしまう描写もいい。あれがこの映画のクライマックスだ(個人的には)。考えてみればリリーが黒鳥(ブラックスワン)の象徴なんだろうな。背中に黒い鳥の刺青あったし。幻想のなかだけかもしれないが。

『白鳥の湖』を特に魅力的にしているのが黒鳥(オディール)の存在だが、意外と知られていないというか、『白鳥の湖』といえば「情景」しか知らないという人が多いのは残念だ。チャイコフスキー自体が過小評価されているというか、軽く見られる風潮があるってのもある。でも某音楽評論家が言ってたように、『白鳥の湖』レベルの音楽を書ける人など人類史上5人もいないのである。その人類史上最強のメロディ・メーカーの最高傑作こそバレエ音楽『白鳥の湖』なのだ。

2時間半以上もあるこのバレエのなかでも特に魅力的な「パ・ド・ドゥ」、これはチャイコフスキーの書いた原曲では第一幕にあり、誰が踊るのかも指定されていない謎の曲だったのだが、彼の死後改変された際、第三幕に移され「黒鳥のパ・ド・ドゥ」として一番の見せ場に昇格した。この改変はオリジナル史上主義の私でも納得だ。

映画のレビューなのに脱線しすぎてしまったが、この映画を観て感動した人は機会があれば『白鳥の湖』も聴いてほしい♬
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