けんさん

婚約者の友人のけんさんのレビュー・感想・評価

婚約者の友人(2016年製作の映画)
4.1
アドリアンの思いと行動も
理解できない訳ではない。

しかしながら、
アンナの方は婚約者を失なった上、
アドリアンの思いも叶わぬこととなる。

ましてや大変悲しい真実を背負いながら、
乗り越えようとしたにも関わらずに
この始末か・・・
これはあまりにも残酷・・・

ところが、
ラストシーンでのアンナは、
例のマネの絵を見て「生きる希望が湧くの」
と口にする。

ん?・・・

戦争を背景にして、
国民性、階級、家族、赦し、嘘、勇気、解放
と色んな切り口のテーマが頭に浮かび、
それが複雑に絡んでいて、全く整理がつかず、
私にはアンナが口にしたその言葉の
明確な真意を見出せなかった。

観点が全く変わるが、
この作品は脇役である婚約者の両親、
ハンスとマグダにも是非注目して欲しい。

脇役ながらも、
この物語のキーとなる存在なのだが、
このお二人の父、母、夫婦ぶりが
この上なく素晴らしい。

特に印象にに残ったのは、
フランスに向かうアンナを見送るシーン。

ハンスがマグダの背中に手を添え、
ゆっくりと静かにさする所作から受ける感は、
役柄としての演技を越え、
本当の夫婦ではないかとさえ思える。

また、もう一つ付け加えたいのは、
ハンスが集会仲間の前で語った言葉。

我々は連中の息子たちを
何千人も殺して
ビールで祝杯を挙げる

連中は我々の息子たちを殺して
ワインで祝杯を挙げる

息子を犠牲に
酒を飲むのが父親

戦争で息子を失ったやり場の無い悲しみを
皮肉と自虐をこめて語ったこの言葉は
いつまでも耳に残りそうだ。
けんさん

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