嘘の色…
ピエール・ニネのビジュアルがこの映画の7割を占める。繊細で、我儘で、勝手で、どうしようもなく絵になる…大きな損失の中にいながら、どうしてもそれに抗えないアンナ。
オゾン監督は物語の2面性がやはり上手い。ドイツ/フランスが負った悲劇は、勝敗とはまた別に全く表裏一体。個人の死やその家族の傷はなおのこと。その傷を埋めるように出会った2人の若い男女。そう、この映画のもうひとつのキーは“若さ”。若さゆえの勢いと、不器用な瑞々しさ。
戦死した婚約者フランツと、そしてアドリアンからも「幸せになって」と言葉を送られたアンナの“幸せ”とはなんなのか。あの絵とラストのセリフ、そして色。それが示す結末はひとつでしょう。しかし原題はなんで『フランツ』なのかな。