垂直落下式サミング

冷たい熱帯魚の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

冷たい熱帯魚(2010年製作の映画)
4.5
和製ワインスタインは園子温かもねってことで、これが解決しないと新作は見れないだろうし、今後次第では過去作品のお蔵入りもあり得るのかなと、今のうちに代表作みとこうかと思い至った次第。
やっぱ、このへんが一番面白かった。『愛のむきだし』とか『地獄でなぜ悪い』みたく全編ハチャメチャがすぎるとむしろ冷めるから、ちゃんとジャンル映画然とした枠におさまってる作品が好きでした。
今みると、日本インディーズ映画の内輪ノリ演技みたいなのが鼻につくけど、ハッタリのきいた狂暴さを多感な時期にくらえば影響されちゃうよな。変な知恵がつく前に摂取できてよかった。
後々のこと考えれば、園子温監督作品のなかではクセ弱いほうで、ぶっと飛びなキャラはでんでんさんがほぼ一人で担っているので、他と比べるとかなり観やすいと思う。
一見人の良さそうなオッサンは、付き合ってみたらギョエエーッみたいな感じだから、みているあいだ中、自分の暮らしている世界と地続きのところに、これと同じ度しがたい悪意がよこたわっているんじゃないかと、そんな不安にのまれそうになる。
元ネタは埼玉愛犬家連続殺人事件。かなり脚色を加えた作品なのかと思いきや、原作にも「ボディを透明に」とか「殺しのオリンピックなら金メダル」とか、ヤバめパワーワードが連発する。実際の事件を調べたら、犯人の風貌がでんでんにちょっと似ていて、それも怖かった。
同じ年には、地下鉄サリンとか阪神淡路大震災とか、けっこうな大事件がたて続けにあったから注目度の低いニュースだったそうだが、それらに負けず劣らずのヤバい事件ではある。
映画で描かれているように、山のなかで死体をサイコロステーキのようにバラバラにして、骨まで焼いて灰にしてしまう凶悪さ。遺留品もない状態ってことは、共犯者が自供しなかったら真相はいまだに藪ってこともあり得たわけで、その残虐性は世界の犯罪史上においても類をみないものだと思う。
死刑とは人道に反する制度かもしれないが、実際問題として、こんなやつらが刑期を終えたからといって、また社会に紛れることをよしとするのかと問われれば、命を奪うこともやむ無しとしかいいようがない。
監督の性スキャンダルについては、いろんな関係者が言及してたけど、だいたいが言い訳並べてるだけで見苦しかったな。知った知らないとか、関与したかしてないとか、重要なのはそれじゃなくないですか?これについてアナタはどう感じて、これからどうしていくのかってはなしだよ。おわかりか?
コイツが業界内外から徹底糾弾されないようなら、普段リベラル気取ってやがるインテリの連中も、結局は日本的村社会の住人なんだって。都合よく透明にされちゃうひとはどこにでもいるんだなと。超安心しました。