垂直落下式サミング

映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.0
今更『妖怪ウォッチ』というアニメについて何かを説明する必要もないんだけど、夕方に子供が観る作品としてスッゴイ高い完成度だと思う。社会的に危険なことや子供の心に波風を立てるようなことはもちろん、「食の倫理」とか「動物愛護」みたいな子供を悩ませる小難しいことは徹底して描かない。他のアニメ作品をネタにしたギャグとかが特徴的だけど、一見奇抜なことをやっているようで、すっごく気を使って一切の毒気や矛盾など、子供を戸惑わせるような要素を削ぎ落とした安心安全を、毎週お茶の間に提供しているのである。配慮されたバランスによって為し得た完璧な牧歌性。ほんっとにスゴイ。
本作は「二次元の世界」と「実写の世界」を往来するメタな視点込みの映画だ。二次元アニメと実写の融合というと『メリー・ポピンズ』とか『魔法にかけられて』なんかが思い浮かぶが、それらと比べてその世界観に必然性があるとは言い難いし、出オチと言ってしまえばそれまでの設定で、上手くいっていない部分もあると思う。
が、この新しい試みを私は好意的に評価したい。過去二作はいつもの話の規模を大きくしただけで正直退屈だったが、本作でははじめて睡魔に打ち勝てたし、何より劇場用アニメーションならではの「毎週テレビでやっているものとは違う特別さ」を感じられた。
次回作あたりで一発『ミュウツーの逆襲』とか『オトナ帝国』みたいなハイブロウ作品に挑戦してほしい。