ひでやん

青春残酷物語のひでやんのレビュー・感想・評価

青春残酷物語(1960年製作の映画)
3.8
痛々しい無軌道な愛。

ジャン=リュック・ゴダールに「真のヌーヴェルヴァーグだ。 私やトリュフォーよりも前にオオシマは、既存の映画とは全く違う映画を撮っていた」と言わしめた衝撃作で、松竹ヌーヴェル・ヴァーグという言葉を生んだ大島渚監督の長編第2作。

ハリネズミのジレンマみたいな愛だったが、付かず離れずという術も知らずに側にいて、傷付け合う男と女。罪を重ねて身体を重ね、性急で衝動的な愛は破滅へ向かう…。現代の感覚で清と真琴を観ると、男は冷酷なドSで、女は不憫なドMに思える。中年男にホテルに連れ込まれそうになった真琴を助けた清だが、貯木場で海に突き落としたり、強引に体を奪ったりビンタしたり。とにかく女の扱いが雑で遊びだか本気だか分かんない男と、そいつに惚れる女。

60年安保闘争の頃の東京、社会や政治や時代に対するやり場のない怒り、当時の若者の気風などが描かれ、楽しく遊ぶ「青春」ではなく、激しく生きる「青春」だった。中年男をカモに、美人局で金を稼ぐ2人にハッピーエンドはなく、タイトル通り残酷だった。

裸で横たわる清の目を映さず、鼻から下を映して強調する煙草。真琴の父と姉の口元を映さず、責める目を強調。そして真琴の顔半分を映さずに靴音を響かせるラストシーンが印象的。自分のためか清のためか、善か悪か、心の半分を映したようだった。

真琴の姉は青春の敗北者で、くすぶる残り火を燃やそうとしているのに対して、真琴と清は社会の敗北者。燃え尽きた青春が残酷だった。
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