ミスター

テイキング・オブ・デボラ・ローガンのミスターのレビュー・感想・評価

5.0
傑作。
ホラー映画好きである私が心からおすすめする最高のホラーと考える一作。ぜひご覧いただきたい。アルツハイマーの疑いのある女性を観察するドキュメンタリータッチの作風。POVの要素を盛り込んでいるためリアリティーがある上に、アルツハイマーではなく実際は恐ろしい何かに憑かれていたという女性の行動が全く予想できないので、終始画面全体に緊張感がある。突然暗闇から現れたりジャンプしたりといった地味なものから、自分や他人の体を食いちぎるというゾンビものを彷彿とさせるような激しい攻撃性まで、驚かせ方は多彩で飽きさせない。正直ここまでホラーを見て「次何が起こるのか」とはらはらした経験は今までなかった。なぜ彼女が取り憑かれたのかに関する謎解きの要素もいいアクセントになっている。
ただ何よりの魅力はラスト。デボラ最終形態のビジュアルのおぞましさは言うまでもなく、BGMも一切ない上にその姿を観てしまった登場人物たちが一瞬言葉を失うという演出によって、「本当にヤバイものを観てしまった」という絶望感を感じられるのは非常に稀有な瞬間。やたらと叫ぶのではなく、沈黙によって最上の緊張感と恐怖を伝えるというのが見事。

恐怖を味わいたい人には自身を持っておすすめできる傑作。
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