ヴぇる

バリー・リンドンのヴぇるのレビュー・感想・評価

バリー・リンドン(1975年製作の映画)
3.7
「2001年宇宙の旅」「時計じかけのオレンジ」で成功を勝ち取っていたキューブリック作品の次に手がけた作品であり、彼の作品の中で唯一伝記を扱っている。

オスカーをいくつか獲得し興行収入も今では2倍近く取り返してはいるが、当時は上手くいってなかったようで、資金回収が出来そうな娯楽映画を撮るために「シャイニング」を撮影したという話もあるほどだ。
今作への逸話は山ほどあるが長すぎるので割愛。

内容自体は彼の成り上がりというか、どのように時代を読み動き、前進して行くかという話なのでわかりやすく楽しませてくれる。加えて原作にはなかったナレーションを入れたことにより映画への入り込みも容易だ。
またキューブリックならではの完全主義故にリアルさが段違いでその時代に本当に入り込んだように錯覚するほどだ。
さらに特筆すべきは音楽だ。ヘンデルのサラバンドは力強く切なさを兼ね備えた素晴らしい楽曲であり、映画史に残る絶大なパワーを持っている。EDでの力強さは3時間今作を見終えたラストにふさわしい。

欠点があるとすれば、インターミッション前後だろう。大きな山場を持ってくるのが相場であり、180分を越す映画ならばそこで観客の目を引く演出が必要なのはセオリーだ。だが今作品はその前例に従わなかった結果、抑揚が少ないように感じてしまう。

映画的には評価される作品であり悪くは無いし、私自身は彼のファンなので最後まで見れたが、キューブリック自身が万人受けしないという理由を差し引いても最後まで付き合うのが厳しい映画なような気もする。
重厚で娯楽的ではない伝記映画好きならば是非オススメしたい映画だ。
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